池田彌三郎の「日本の幽霊」より
512 名前:仕事に疲れてる俺 3 :03/01/11 16:28
池田彌三郎の「日本の幽霊」に出てくる話です。
一人住まいのお婆さんが家でご飯を食べていると
廊下にションボリ若い女の幽霊が座っていました。
お婆さんはその幽霊に見覚えがあったのです。
隣の芸者屋にいた女でつい先日亡くなったのでした。
隣の芸者屋の女あるじは厳しい人で
この女あるじの妹分の若い女には厳しく当たるだけでなく、
ご飯もろくに食べさせませんでした。
若い女が亡くなった時には、近所でもとうとうあの娘も
女あるじにイジメ殺されたねと噂しあっていたのでした。
老婆はそんな女を不憫に思って、時々こっそり呼び入れては
菓子をやったりご飯を食べさせて上げていたのです。
そんな老婆の元に迷って出て来たものですから
老婆は恐ろしいと言うよりも腹が立ってきて
叱りつけたのでした。
「お前さん、あたしゃお前さんに恨まれる筋合いは無いよ!
恨むんだった隣のあんたの姉さんの所へでたらどうだい。
うちへくるなんておかど違いだよ!」
と威勢良く若い女の幽霊をしかり飛ばしたのでした。
するとその幽霊はしょんぼりとしてこう言ったのでした。
「わたし、こわくてお姉さんの処には出られないんです。」