訪問

38:訪問1:2007/12/18(火) 16:06:40 ID:bM3ETaGh0

少々長いがお付き合いをば。 

AとB、二人の若者がドライブをしていた。突然目の前に現れた影を轢いてしまう。 
「ヤバ!」慌てて車から降りる二人。「ううぅ~。」うめき声が聞こえる。どうやら人を轢いたらしい。 
が、二人は安堵にも似た奇妙な感覚を覚えた。
轢いた相手は、二人が住む街で有名な頭が少しおかしい浮浪者だったのだ。 
若い二人からしたら、彼など道端の猫と同然。「はは、こいつか!」「あ、わりーなおっさん!」 
等といい、笑いながら二人は車に乗り去って行った。 

後日。一人暮らしのAは自宅で彼女と酒を飲んでいた。 
夜も更けかけ、翌日自宅で用がある彼女を玄関まで見送り、酒もまわって心地もよく、そろそろ寝るか、と思ったところで携帯が鳴る。Bだ。 
B「おい!A!お前今どこにいる!?」やたら興奮した様子に苛立ちすら覚え、不機嫌にAは答える。 
A「あ!?家だよ家。寝るとこ。なんの用だよ!?」 
以下、Bの話。 

Aと同じ街で同様に一人暮らしのB。自宅で寝ようとベッドに入り、意識も薄れ掛けてきた頃、ドアを叩く音で目が覚めた。 
「ドンドンドン!・・・お~い。Aだけど開けてくれ~」 
こんな時間に連絡も無く来て騒ぐAにBは若干の怒りすら覚えたらしい。そっと重い腰を上げ、静かにドアに近づく。 
ドアをいきなり開けることで深夜の非常識な友人に怒りのアピールをしようと考えたからだ。 
「ドンドンドン!・・・お~い。Aだけど開けてくれ~」 
うっせぇなこの酔っ払いが。ドアの前にこっそり立ち、位置の確認の為にスコープを覗く。 
そこでBは固まった。 
そこにいたのは、Aの声を発するテープレコーダーを持ち、バットでドアを叩く、例の浮浪者だった。 
Bは声も出せず、またスコープから目を離せず、ただ立ち尽くしていた。 
しばらくすると、その浮浪者はレコーダーを止め、「こっち、いないいない」と呟き去っていったそうだ。 


A「はいはい。怖い怖いっと。」酒のせいもあり、また、不機嫌なAは真剣に話を聞こうとはしない。 
B「バカ、嘘じゃねぇ!あいつ『こっち』いないって言って・・・」 

ピンポーン。Aの家のインターホンが鳴った。 

A「あ、彼女が忘れ物でもしたのかな? OK、B、その話はまた明日!おやすみ!」 
B「待て!切るな!」 ピッ。半ば強引に電話を切る。 

ピンポーン。再びインターホンと同時に声。「おい、A!!」 

A「はいはいー!今開け~・・・・・・・ッ!!????」 

ピンポーン。「おい、A!!」外からBがAを不機嫌に呼ぶ時の声がする。 
一瞬、Aの思考が止まる。何秒立っただろう。 

そして、ドアを叩く音と、聞き覚えの無い笑い声が響いた。 

「ガンガンガン!いるいるいるいるいるいるいるいるいるいる」 

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