赤い屋根の家

661 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :02/11/02 17:57 
 私が中学生の頃、学校の近くで火事がありました。
一軒家が全焼して、死傷者が出たそうです。
火事からしばらくして、その焼け跡で幽霊を見たという噂がたちました。
部活帰りで帰宅が遅くなった人たちが見たそうです。
 クラスでも噂になりましたが、自分の通学路から外れていたこともあり、
私自身それほど興味も持たずにいました。
 そんなある日、私は友人のK子ちゃんに何気なく噂話をしました。
K子ちゃんはどちらかというと大人しく、目立たない感じの子でしたが、
私と2人きりなら良く話をしました。
「火事があった場所に幽霊が出たんだって」
そういう私に、K子ちゃんはまるで内緒話するかのように言いました。
「あそこにはいないよ。本当にいるのは」
K子ちゃんはちょっと躊躇って私に耳打ちしました。
「コンビニのあるビルの裏。赤い屋根の家だけど、あそこは危ないかも」
そこは私の自宅からすぐの場所でした。
「友達だから言うの。本当に近寄らない方がいいよ」 

 私は幽霊を見たことも無かったし、霊感もないと思っていました。
だから、家の近所にそんな場所があると思うと、とても興味を持ちました。
 ある土曜日の午後、私は家を見てみたいという好奇心から、つい寄り道をしました。
コンビニのビルの裏は、車一台の道幅もない細い路地でした。
私が住む町の一帯は元々農地で、それを宅地に分譲したために、細い路地が至る所にありました。その通りもひっそりとした、住人以外立ち寄らない場所のようでした。
 百メートルほど進むと、当たりは古い家の造りが多く、垣根や門構えがありました。
そんな中で、赤い屋根を見つけることは難しかったことを覚えています。
瓦の色も褪せていて、ほとんど灰色がかっていました。
(分かんないや。本当に幽霊なんているのかな?)
そう思っていると、ふいに背後から人の気配がしました。
振り向く暇も無く、相手が私を通り過ぎようとした瞬間、
「 い ね ぇ よ 」
確かにそう聞こえました。
私は驚いて立ちすくんでしまいました。
相手はぼさぼさの長髪で、グレーのトレーナーとスウェットを着た男でした。

その男は門を開けて、木造の古い二階建ての家に入りました。
そして、門を閉めようとして振り返ると、私のことをじっと見つめました。
生気の無い表情でしたが、目を見開いている感じでした。
それから、声を出さずに、口だけで私に語り掛けました。
一語一語ゆっくりと、四つの言葉を吐き出しました。
「 オ オ ウ オ 」

私は急に怖くなって、走って逃げ出しました。
男が私に何を言ったのか分かったからです。
今考えても、それは「 コ ロ ス ゾ 」だったような気がします。 

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