インキュバス

191 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :02/09/30 23:19 
ずっと前に練馬の木造アパートに住んでいた。
築三十年、風呂なし共同トイレ、住んでいるのは貧乏学生の俺、
ネパール人、逃亡中らしきおやじ。
 大家は変わり者のじいさんで、雨漏りする屋根を修理せずに、
二階は人が住めなくなっていた。
 俺もバイト三昧で、ほとんど寝るだけの部屋だったので、
カレー臭いのも気にせず住んでいた。
 ある時期、風邪をこじらせて寝込んでしまった時のこと。
真夜中、女の笑い声が聞こえてきた。
 両隣はひっそりと暮らしている連中だったし、そんなことは今までなかった。
 まあ、住人が女を連れこんだのは確からしい。
俺は耳をそばだてて、何かが始まるのを待った。
しかし、時々笑い声が聞こえるだけで、会話らしきものも祭りも始まらなかった。
 次の日も女の笑い声がした。そして、三日間それは続いた。
そんな最中、数少ない友人の一人が心配して訪ねてきた。
 友人は俺の部屋の異様な臭いにむせながらも、俺が酷くやつれているのに驚いた。
女の声を聞くようになってから、俺は毎晩夢精するようになっていた。
毎晩というか、寝て目がさめるとそうだった。
 俺が事情を話すと、友人はインキュバスの仕業に違いないと言った。
とにかく部屋を出ろ。このままじゃ死ぬぞ、との忠告に従い、俺は友人宅に避難した。 

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