先輩の声

15 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :02/03/17 20:37
高校生の頃、私はこたつで本を読みながらそのまま眠ってしまった。
適度に暖かいこたつで眠ると朝まで起きない。
しかし、その夜だけは、突然真夜中に目が覚めた。
起きたばかりなのに何故か少しも眠くない。
今まで起きていたみたいに頭ははっきりとしている。
「なんでこんな時間に?」さすがに不思議に思っていると
「○○○○」と、窓の外で私の名字を呼ぶ声がする。
それは確かに部活の先輩の声で、
彼の家は私の家から7,8分の所にある。
でも、いつもと違って、おだやかで優しい声だった。
彼とは別につき合っていたとかの恋愛感情はなく、
それは向こうも同じの、仲のよい先輩後輩の間柄だった.
こんな時間に家まで来るのは緊急の用件だろうと、
私は急いで窓を開けた。
二階の私のいる部屋から声のしたあたりを覗いたが
そこには誰もいない。
夜中で、名前を呼んで探すのも近所迷惑になるのと、
家人を起こしていらぬ詮索をされるのが嫌で声は出さなかった。
しばらく探したが、やはりそこには誰もいなかった。
窓を閉めてこたつに戻ると、眠気が戻ってきたので眠ってしまった。

翌日、学校でその先輩に夕べの話をすると
「なんで俺がそんな真夜中にお前の家まで行かなきゃいけないんだよ」
と、いとも簡単に否定された。
でも、確かにあれは先輩の声で空耳ではなくはっきり聞こえた。
「夢でも見たんじゃないの?」
と相手にされなかったが、間違いなく確かに聞こえた。 

その日、たまたま霊感が強いというOBさんが遊びに来ていて、
面白がった友達がその話をした所、OBさんは真剣な顔をして
「・・・その声に、返事とかしなかった?」
と聞いた。
夜中だし、声は出さなかったと答えると
「それでいい。これから同じ様なことがあっても、決して返事はしないようにね。」
なんだか怖くなって訳を聞くと
「それは聞かないほうがいいよ。ものすごく怖い思いをするから。」

それからそんなことは一度も起こらなかったが、
今でも思い出すと背筋が冷たくなる。
あの声ではなく、あのときにOBさんは何を知っていたのか。
そして、もしあの時に返事をしていたら、私はどうなっていたのか。 

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