失恋

9 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :02/03/17 20:01
私は大学3年の頃、ひどい失恋をしました。相手は大学教授。
彼に手紙で告白したところすぐに、「僕には近い将来結婚しようとし思っている女性がいます。
僕が原因で悲しむことはしないでください・・・」という誠実な手紙が来ました。
でも、あまりのショックに、私はその手紙を燃やしてしまったのです・・・彼の婚約相手とは、私より1つ年下の学生でした。

私はその後、卒論指導をして欲しいと、彼に相談を持ちかけました。
彼は私を教職員ロビーによんで、話を聞こうとしてくれました。
そして、「あのことは、もう良かったのかな?(解決したのかな?)」と声を掛けてくれました。
私はすかさず「もう大丈夫です。先生からの手紙には感動しました・・・」などと、思いもよらぬ言葉を口にしてしまったのです。
彼は不信そうな顔をしていましたが、話は卒論の本題に移りました。

「君は僕の専門分野の卒論を書きたいそうだけど、どんなことを書きたいのかな?」
「私は\\\論を書きたいのですが、どうすればいいでしょうか・・・」
その"\\\論"とは、彼の専門分野ではなく、彼の理論に相反する内容だったのです。 

彼は体を後ろにそらせ、冷たい口調でこう言いました。
「あっそう。分かりました。僕には役に立てそうもないようなので、これで失礼していいかな?」

私は何日か後、彼に「先生、私がんばります!」などと訳のわからないことを言い、その後2通も手紙を書いてしまったのです。
その内容は、「私は振られても、ずっとあなたを愛しつづけます・・・」というようなものでした。

ある日電車のホームで彼と行き会いました。彼は私をちらっと横目で見て、無視しました。
電車に乗った後も、私は彼と話したくて、つい彼が降りる駅でいっしょに降りてしまいました。
彼は改札口のところまで行くと、私を激しくにらみました。
そして、私が何か言おうとすると、くるりときびすを返して、ホームの方へ戻りはじめました。
私はホームまで彼を追いかけ、「違うんです、私・・・」と、話し掛けようとしましたが、彼は私をよけてまた改札口の方に立ち去ってしまいました。 

その翌日、彼から手紙が来ました。
内容は、
「あなたから好きだとか何とか言う手紙をもらうのは、大変迷惑です。
もういいかげんにやめて下さい。
これからあなたが何を書いてきても、もう返事を書くことはしません。
どうせ送り返すだけですから・・・」
というもので、前に私が書いた手紙が同封されていました。

私はその日から、変わりはじめました。でも相変わらず彼を好きでした。
濃い化粧をし、派手な服を着て、彼の研究室の前をうろうろしたり、彼の後をつけたり、彼の婚約相手の近辺をうろうろしてみたり・・・

卒業式の日、夜になって、袴姿の私は何気なく彼のアパートのほうまで歩いていきました。
当時彼は既に引っ越していて、表札がありませんでした。
私はそっとドアのノブを回すと、重い扉は開きました・・・中は空洞で何もなく、人の気配もありませんでした。
私は泣きながら、部屋を徘徊しました。そして一晩そこで過ごしたのです・・・

午前3時ごろ目がさめて、あたりを見回しました。白い影が、キッチンのあたりでゆらゆらしました。
私は「先生・・・?」と声をかけました。
すると、寝室のあたりから、女の人の喘ぎ声がしだしたのです。
明らかに快楽に悶えている声でした。私は憎悪に燃えてそこに立ち尽くしていました。

翌朝、近所の奏でる琴の調べで目がさめました。良い天気で、すがすがしい早春の匂いがしていました。
私は持っていたカメラで、彼の部屋中を写しはじめました。
彼が過ごした場所に自分がいることを、心にだけでなく形に留めておきたいと思ったのです・・・
そして空になった戸棚の中にあった小さなお守りをそっとポケットにしまいました。

カメラを現像にだしてから数日が過ぎ、私はその写真をそっと見てみました。
すると、彼の部屋のキッチンにある大きな鏡の中には、私が彼のために料理を作っている姿が写っていました。
隣りの部屋には、嬉しそうに待っている彼がいました。
よく見ると、それは、私が心に描いていた空想の風景でした。
ほんとうに幸せな風景でした・・・

私は今、お腹の中に新しい命を宿しています。父親はいません。
名前は彼と同じにしようと思っています。そして、彼のように立派な学者に育てあげたいと考えています・・・ 

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