前代未聞

964:本当にあった怖い名無し:2009/06/19(金) 15:41:58 ID:6UZcP3Vr0

俺が中学生のときのクラスメートにヘチョというあだ名の奴がいた。
底抜けに明るい性格で、みんなから好かれていたが、ひとつだけ問題があって
じっとしていられない性格というか、授業中にいきなりワーッと
叫びだしてしまうよな、まあはっきりいうと軽度の知的障害があるやつで
担任からもとうとう「このままだとヘチョはみんなと一緒に勉強できない」
「違うクラス(要は特殊学級)で勉強してもらうことになる」といわれてしまった。

みんなヘチョのことが好きだったので「それは嫌だ」
「ヘチョと一緒に勉強したい」と。そこで「じゃあ、みんなで協力して、ヘチョが
授業中に騒ぎそうになったら注意していこう」ということになった。
それからは、ヘチョが授業中に騒ぎそうになるたびに「まだだよ!」
「あと~分で終わるから頑張ろうね!」などと声をかけて、何とかヘチョが
みんなと一緒に勉強できるように努力した。しかし効果はあまり見られなかった。

それから一週間くらいしてからかな、ヘチョに変化が見られた。
あれだけ騒いでいたヘチョが授業中に一切騒がなくなった。
まるで別人のように大人しくして授業を真面目に聞くようになった。
みんなの思いがようやく伝わったのか。俺たちはうれしく思っていた。

それから数日後。未だにヘチョは大人しく授業を聞いてくれている。
いいことなのだが、少し変だなと思うこともあった。あまりに性格が変わりすぎてる。
あれだけ明るく喋るのが好きだったヘチョが、授業中だけでなく、休み時間も
喋らなくなってしまった。みんなと目も合わさず、休み時間になると
トイレに篭ることも多くなった。友人の話によると、こもったトイレの中から
ぶつぶつと独り言が聞こえてくる事もあったという。

その2日後、ついに事件は起きた。
忘れもしない、昼休みが終わって、5時間目の国語の授業中だ。
そのときの授業は四字熟語で、国語の教師が黒板に「前代未聞」「支離滅裂」
などいろいろな四字熟語を書いていくが、何しろ昼飯を食い終わった後の午後だ。
眠くてしょうがない。全く授業は頭に入らずウトウトしかけたそのときだった。


「いやあああああああああああ!!!!!!」


教室中に女子の叫び声が響いた。俺はそれで一気に目が覚めた。
見ると、叫んでいたのは教室の一番後ろの席の女子で、ガタガタ震えている。
俺も、教師も全くわけがわからないので、教師が「どうした?何があった」と訊く。
するとその女子は声にならない声で「ヘチョが・・・ヘチョが・・・」と指を指した。

ちょうど俺の席の隣りがヘチョだったのでバッと横を見ると、
ヘチョがノートを自分の体に押し付け、明らかにノートと体の間に何かを隠している。
俺が「ヘチョお前何持ってるんだ見せてみろ!」とむりやり腕を持ち上げると、
横からバサッと何かが床に落ちた。
見ると、台風倶楽部という読者投稿型のエロ雑誌の5月号だった。
「ヘチョてめえ、これを見てたから大人しかったのか!ちょっとカバン開けろ!」
といってカバンを開けてみると台風倶楽部の1月号から12月号まで全部入っていた。
「お前これどこで手に入れた!」「ゴミ捨て場」騒然とする教室。女子は泣き叫ぶし
男子は興奮するしでもはやパニック状態。


ようやく騒ぎが収まったのを見計らって、国語の教師が黒板を指して一言言った。
「いいですか皆さん、こういうことを「前代未聞」というんです」
ヘチョは特殊学級に送られた。 

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