クロダ

656:1/4:2009/06/17(水) 17:05:21 ID:Ewi2MyXg0

今でも不思議でワケわかんないんだけど、俺の幼馴染が遭遇した話を書きます。 
長いです、ゴメンナサイ。幼馴染は女なので、名前は仮にA子とします。 

もう5年前になるけど、A子は当時23歳だった。 
そこそこ美人なんだけど、性格がかなり変わってて近寄りがたい雰囲気の女なので 
当然彼氏も居なくて、俺はよく「誰かいけめんを紹介してくれ」と言われていた。 

ある日、仕事から帰ってきた俺は、家の前でA子とカチあった。(家が隣同士) 
いつもは軽く立ち話をするのだが、この日はA子がこんなことを話し出した。 

 『今日、たまにはバッグの掃除でもするかーって思ってさぁ。 
  いつも持ち歩いてるトートバッグの中身を、テーブルの上にぶちまけたの。 
  まるめたゴミとか100円玉とか板ガムとかいろいろ出てきたんだけど、 
  その中にさあ、なんか畳んだメモが1枚あってね。 
  なんだろと思って開いたらさ…ほら、コレなんだけど読んでみ』 

そう言って、1枚の紙切れを渡してきた。 
何かのDVDの予約受付票(販売店とかにまとめて置いてあるやつ)の裏に、 
ボールペンで雑な文字が書きなぐってあった。 

 『●●●であなたを見かけました。とても気になっています。 
 どうしても声をかけることが出来なかったので、こうしてメモを書きました。 
 俺は20歳、××大学の学生です。顔はよくラルクのハイドに似てると言われます。 
 個人的にお会いしたいです、電話かメールください。090-****-****、メルアド***@***~』 


俺は思わず「うわキモ」と口走った。 
●●●とは、近所にあるレンタルビデオ店。××大学も近所にある。 
その自称ハイド君は、一切気配を悟られずにA子に忍び寄り、 
肩から提げているトートバッグの中にこのメモを放り込んだのだろうということだった。 

A子は、面白そうだからこれからメールしてみると言いだした。 
この頃のA子はとにかく彼氏に飢えてたし、なんつうかバカだったので 
こんなおかしなアプローチにもロマンスを感じてしまったんだろうと思う。 
俺は別に止める理由も無いので、「どうなったか後で教えてね」と言ってその場はオシマイ。 

そしてこの日から俺に、ハイド君にアクセスしたA子からの詳細メールが届いた。 
ちなみに1週間でこんな感じだった↓ 
 「さっきメールしたよ!はいど君、照れちゃってなんかすごいかわいい感じw」 
 「とりあえずメールから友達始めることになったw」 
 「初めて電話した!声渋くてカッコイイ」 
 「今日はすごく口説かれた、今度会ってくるかもw」 

そんなこんなで、また家の前でA子とカチあった時。 
ホラこれがハイド君だよー、といって携帯に送られてきたという画像を見せてきた。 
でも、そこには俺が写っていた。 

「は?コレ俺じゃん」と思ったんだけど、A子はハイド君だと言う。 
しかも「確かにちょっとハイドに似てるでしょ」なんて言って喜んでる。 
意味がわからなくて、しげしげと画面を見るんだけど、どう見ても俺の顔だと思った。 
でも俺はA子の携帯に自分の画像なんて送ってないし、 
そもそも俺はハイドになんて全っ然似てない。 

ワケがわからなくなって、何だかものすごく恐くなってきたので 
A子に恐る恐る「あのさ、これ俺に見えるんだけど」って聞いた。 
A子はポカーンとして、「なに言ってんの。あんたじゃないでしょ、どう見ても」と言って携帯をひったくり 
それに目を通した瞬間に、金切り声を上げて、携帯ぶん投げた。 
あまりの勢いに俺も、どうしたよ!?おい!?ってビビってると 
A子が「かおかお、顔が…」と叫んでた。 
下に落ちた携帯をつまんで見てみると、男の顔がさっきと変わってた。 

もう俺の顔じゃないんだけど、なんか虫唾の走ったような機嫌の悪いへんな顔になっていた。 
マジですっっげえビビった。 
A子が「その画像消して!はやく消して!」と喚くので、怖かったけど俺はその画像を削除した。 

二人して冷や汗かきながら、「なんなのアレ」とか
「いたずら画像なのか?」とかギャアギャア騒いだけど 
結局「わけがわかんない」ので、気持ち悪いしこりを残したままその日は別れた。 


その後、A子のところにハイド君から電話が1回だけあった。夜中に。 
怖くてとらないでいたらしいのだが、何分も何分も延々と着信が続き、 
恐ろしくてついに電源を落としたそうだ。 
次の日の朝に電源を入れるとメールが届いていて、そこには「マタ遭おう2:30」と書いてあった。 
そしてハイド君からの連絡は一切なくなった。 

でも、話はまだ終わらない。 
この騒動から1年かそこらが経ったある日に、A子がウチに転がり込んできて騒いだのだ。 
なんと、バッグの中にあのメモがまた入っていたそうだ。俺も寒気を覚えた。 
文面はほぼ同じで、「○○であなたを見かけて、気になったのでメモを入れた…」というものだった。
しかし今度は場所がレンタルビデオ屋ではなく、地下鉄の駅の名前。 
紙は破いた手帳ノートみたいだった。 
差出人は××大学の学生、自称ハイド似の20歳の男。やっぱりあいつだと思う。 
もちろんA子はこれに応えなかったし、幸いそのまま何もなく無事に終わってくれた。 

今でも不思議なこのメモ騒動なんだけど、 
いったいなんで俺の顔だったのか、 
なんでA子は俺の顔を見て「ハイド君」だと信じ込んでたのか 
本当にわからない。ぜんぜん見当も付かない。 
もしかして全部A子の狂言かなって思ったこともあるけど、さすがに違うと思う。 
バカだけど、根本的にああいうことをするタイプの人間じゃないし… 

最後に、このハイド君は「クロダ」と名乗っていた。 
もしバッグの底に、自分の知らない畳んだメモがあって、 
それが「クロダ」からのものだったら気をつけてください。 
好奇心で連絡しちゃうと、おかしな目にあうかもしれません。 

長くて本当にごめんなさい。 
もしかしたらまたあるかもしれないって不安はあるんだけど、 
とりあえずこれでおしまいです。 

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