触ってくるもの

184 本当にあった怖い名無し sage 2006/05/20(土) 22:51:53 ID:6j741OHe0
トンネルの探索を終えて車まで戻った私と友人A。
何事も無くこのまま無事に帰路に着くと思われたが…
話はここで終わらなかった。

ここからは文章のみの体験談でお伝えします。

探索を終えて私と友人Aが一服していると後方から車のライトの光が見えた。
ゆっくりとその車はトンネルまで近づいてきた。
その車は軽自動車で運転席には若い男性が見えた。
助手席にははっきりと見えないが若い女性が座っている様子。
時間は深夜三時を回ったところ。
どうやら地元の人間では無く肝試し目的のようだ。

その車が私達の横を通り過ぎようとした瞬間…
「なんや、あの後部座席の女。俺らにガン飛ばしてるみたいやで。」
友人Aの言葉を聞き、私も肝試し目的と思われるその車の後部座席に目を向ける。
友人Aの言うように後部座席には女性が座っており私達の方を俯き加減にじーっと見ている。
しかしその女性、どこか不自然だ。
「ちょっと追いかけようぜ。」
友人Aはそう言うと助手席に乗り込んだ。
私は直感的に嫌な予感がしたがその女性に感じた違和感が何か知りたいという衝動に駆られ友人Aに同意した。
私も運転席に乗り込みその車を追いかける事にした。

私達はトンネル内に入っていったその車を追いかける。
その車はやはり肝試しが目的らしく時速10~15kmほどで走行している。
私達の車は直ぐに追いつきその車の後ろにピタリと付ける。
私達の車のライトに照らされて前の車の後部座席に座った女性がぼんやりと見える。
後部座席の女性は後ろを振り返りまた私達をじーっと見始めた。
「薄気味悪い女やのぉ。」
友人Aがそう呟く。

トンネルの中腹に差し掛かった地点で私はある事に気付く。
後部座席の女性は私達を見ているものと思っていたがよく見るとずっと白目を向いているでは無いか。
長い髪をだらりと垂らし俯き加減に白目を向いているのだ。
そして薄っすらと笑みを浮かべているように見える。
私より視力が劣る友人Aはその女性の異様な面立ちに気付いていないのだろうか…。
トンネルを抜けると前の車はハザードランプを照らし停車した。
車線が広がったので私達はその車をゆっくりと追い越し前に出た。
そのまま帰路に着こうか迷ったが私は思うところがあり一旦車を停車させた。

友人Aを車に残し私だけ車から降りて先程の車に近づいた。
暗くてよく見えないが助手席の女性と運転席の男性が何やら言い合っているように見える。
後部座席は…暗くて何も見えない。
私はもう少し近づき車内の様子を探る事にした。
どうも助手席の女性がかなり取り乱しているみたいで運転席の男性がなだめているみたいだ。
後部座席には…誰も座っていない…。
助手席に座っている女性が今まで後部座席にいて移動したのだろうか?
いや違う、助手席の女性の髪形はショートカットだ。
私達が見た後部座席の女性は髪をだらりと垂らしたロングだった。
車から誰かが降りたという気配は無い。
もしかして後部座席に横たわっているのか?
私は後部座席に座っていた女性の存在を確認する為、そして車内の只ならぬ様子の原因を確認する為に心配する
素振りを見せながらその車に近づきウィンドウをノックして声を掛けた。
「大丈夫ですか?」
私は運転席の男性にそう声を掛けた。

声を掛けつつも私は後部座席をちらりと見た。
やはり後部座席には誰もいない…。
「あ…、すみません、大丈夫です。なんか彼女が取り乱しちゃって…。」
彼氏らしき男性はそう答えた。
彼氏の言葉を否定するように間髪入れず助手席の女性は錯乱した様子で叫んだ。
「誰かに触られたの!トンネルの中で後ろから誰かに!首元を誰かに触られたの!」
やはりこの車の後部座席には何かがいたみたいだ…。
私は彼らにお別れを言いその場から離れた。
もちろん私達の見たものは彼らに伝えずに。

友人Aを残した車に戻ると…
「あれ?Aがいない…。」

小便にでも行ったのだと思い私は運転席に乗り込む。
友人Aが戻ってくるのを車内で待つ事にした。
一分程、経ったくらいだろうか…
私がふと後ろに何かの気配を感じたと思った瞬間!
私の首元に誰かの手が触れた!
「おい!A、ふざけんなって!!」
そう言った瞬間、自分の口から出た言葉の矛盾に気付く。
友人Aはさっきの車の女性の台詞を聞いていない!
私はとっさに後ろを振り向くがそこには誰もいない…!
首元の感触も無くなっていた。

暫くして友人Aが戻ってきた。
「ん?どした?」
硬直した私を見て友人Aはそう尋ねてきた。
「いや…、何でも無い。」
私は煙草を一本吸い安全運転を心掛け帰路に着いた。

私達の見た後部座席の女性が旧伊勢神トンネルと何か関係しているのかは分からない。
しかしこのトンネルにはきっと何かあると感じさせられた出来事だった…。

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