静岡の山中で

464 名前:あぷ乗り :2001/07/18(水) 03:30
去年の8月から11月下旬まで、俺はバイクで日本一週の旅に出てました。
その旅の途中、11月初めの頃の話です。
ちなみに俺は霊感は一切無く、今まで一度も霊などを見たことはありません。

その日は埼玉の知人の家を早朝出発し、静岡近辺のキャンプ場を目指して走っていた。
話は少しそれるが、俺の旅のスタイルは知人の家に泊まる以外は
全てキャンプで過ごしていた。なので、荷物がとにかく多く
重さで言うなら、人を一人乗せてるぐらいの重さである。

時間は夜の7時ぐらいだろうか。7時とはいえ11月ともなると
完全に日は落ちていた。
静岡に入り、しばらくは海沿いの大きな国道を走っていたが
地図を見ながら「そろそろこの辺を右かな?」と思いつつ
交差点を曲がりしばらく進むと、急なのぼり道になり
下に、今まで走っていた国道が見下ろせる感じだった。
しばらくすると「○○キャンプ場→」という看板があり、それに従って走ると
車が一台通れるかどうかの細い道に変わった。
何となく「公園の中にある道」という感じで
街灯も多く、犬の散歩をしてる人もいてその道は特別怖い感じはしなかった。
ただ、木が覆い茂っていて、地味な道だなと思った。
その道を抜けると、突然大きな道にぶつかった。(T字路の下から来た感じ)
「どっちに行けばいいんだ?」と悩んでいると、
小さく「キャンプ場→(5KM)」と出てたので、そっちに進む。
しかし、この道が妙な感じがするのだ。
2車線の大きめな道で、まだ新しい感じがする。
だけど、街灯が一つも無く、すれ違う車もまったく無い。
かなり高いところまで上ってきたようで、夜景がきれいだったのが印象的。
だが、とにかく生活感が無いというか、人の気配がまったく無い。
かなり怖くなってきた。
結局、後2kmのところで引き返すことにした。
「こんなに怖くちゃ、キャンプなんてできねーよ」と思いつつ。 

普通、道に迷ったりした場合来た道を引き返せばいいのだが、
その時はそうはいかなかった。
まず、地図を見ながら走っていたため景色などをあまり見ていなかった。
夜で、尚且つ街灯が無いため、周りがよく見えてない。
そして、来た道が細い道から大きい道に出ているので、気づきにくい。
これらの条件が重なり、元の道を通り過ぎてしまった。
しばらくたってからその事に気づいたので今さら戻る気はしない。
しばらくそのまま走るとまたもやT字路にぶつかる。
今度は看板も何も無い。左は細い1車線。右は今と同じ広い2車線。
感覚的に右の方が国道に近づいてる気がしたので右に進む。
しかし、その判断は間違っていた。走れば走るほど山の中に向かっている。
鬱蒼とした、カーブの続く道。相変わらず街灯も無く、すれ違う車も無い。
恐怖心はピークに向かっていく。だんだんペースが上がっていく。
ふっと看板が見えた。しかし、スピードが出すぎていてあっという間に通り過ぎてしまう。
かろうじて見えたのは「火」という文字だけ。
「火・・?まさか、火葬場か?この先にそんなものがあるのか?」
ここまで来ると何でも怖い方向へ考えてしまう。
とりあえず、引き返せばいいのに止まる事すら怖いと思ってしまう。 

見通しの悪い、緩い下りのカーブを曲がろうとした時である。
なぜか、「ヤバイ!」と感覚が頭をよぎる。
しかし、スピードが出ているため止まる事はできない。
そのままカーブを曲がると、目の前には大きなトンネルが。
その瞬間、足元から一気に頭のてっぺんまで、震えが走る。
こんな感覚は初めてだ。体中がやばいと言っている。
2車線の道路をすっぽりと覆う、かなり大きなトンネルである。
奥行きもかなり長そうだ。ハイビームでも出口が見えてない。
しかし、ライトが一つも点いていない。真っ暗なのだ。
こんなでかいトンネルなのに、ライトが一つも点いてないなんてあるのか? 

もう、引き返すしかない。だが、こんな時に冷静な判断などできない。
慌ててUターンしようとした俺は、バイクを倒してしまったのだ。
トンネルまで10mくらいの距離である。
必死でバイクを起こそうとするが、荷物満載でとてもじゃないが一人では起こせない。
しかし誰も通らない。どうしようもないので、バイクを倒したまま荷物をバラす事にする。
なるべくトンネルのほうを見ないように、視界を狭くするためメットもかぶったままで。
その間、トンネルから視線をガンガン感じる。
とりあえず、荷物を全部降ろしバイクを起こす。そして荷物をまた積む。
メットの中でハァハァと息を切らしながら。しかし汗一つかかない。
いや、むしろ寒いくらいだ。とにかく荷物を積み終える。
そしてエンジンをかけその場を去ろうとした瞬間、
クラッチレバーが無い。折れてしまったのだ。
クラッチが無くても走行することは可能だが、発進する時に押して勢いをつけなければならない。
荷物満載、しかも緩い上り。普段なら無理だろうが、その時は関係なかった。
鬼のような力で、バイクを押し走り去った。

そして、さっきのT字路で見つけてしまった。
「○○駅↑3k」

終わり 

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