時計

514 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :2001/05/28(月) 05:37
 以前彼女の買い物に付き合ったときの事です。何軒かのショップを冷やかした後
少し休もうと喫茶店を探していると、時計屋のショーウィンドウに
飾ってある時計が目に付いたのです。
 なかなか良いデザインで、彼女も気に入ったみたいでした。
値段もさほど高くない。
私は少し早めのバースディプレゼントとしてそれを買ってあげることにしました。
店を出ようとしたとき、ベレー帽をかぶった猫背の40代のおばさんが
ずかずかと入ってきました。
 あそこに飾ってあった時計はどうした あれは私が買うはずだったんだ。
と金切り声で店員に言いました。私の彼女は反射的にさっき買った時計を
隠しました。店員は2,3日ほど前にあなたくらいの女性が買っていったといいましたが、
お金は持ってきたんだと 小銭入れのような小さな財布を見せていました。 

そのおばさんはあきらめて 時計を買った者へ対する呪詛の言葉を
吐きながら、出て行きました。
店員に聞くとベレー帽のおばさんが言っていたのは、私の買った時計で
今まで何回も 次はお金を持ってくるからといってはその繰り返しだったそうです.
 私達はファーストフード店で休んだあと映画を見て夕食を食べに行こうと
歩いていた時 自動販売機に硬貨を入れているベレー帽のおばさんを見つけました。
 こちらに気付いた様子もないのですが私達は足早に その場を去りました。
夕食を済ませ、彼女を駅まで見送りに行きました。 駅構内の本屋にあのベレー帽の
おばさんがいるのが見えました。地図のコーナーをじっと見つめています。
 彼女が恐がったので家まで送る事にしました。
小雨が降ってきたので傘を買って二人で住宅街を歩いていると、後でクラクションが
なりました。振りかえるとベレー帽のおばさんが横断歩道を小走りに渡って
行くのが見えました.。
 次の日 その時計を質屋に入れました。
 買った1割にしかなりませんでした。 

前の話へ

次の話へ