漆黒の何か
604 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/08/08(月) 18:20:01.24 ID:qfMk8uoF0
またしても山道の話なんだが。
15年ほど前、北海道網走市に住んで、ある会社に勤めていた。
服務規則にそんなにうるさい会社じゃなかったので、車で通勤する届けを
出しておけば、4輪でも2輪でも、大型ダンプで通っても怒られなかった。
(まあ、一度だけ、知人の旅行会社経営者から借りた54人乗り大型バスで
乗りつけたときは部長にこっぴどく怒られたことはあるけどな…)
そこから東の町、斜里町…今は世界自然遺産になった秘境がある町…が
俺の営業区域だった。
ある夏の日(ちょうど今頃だったな)、俺はその町へ営業に行くことに
なっていたんだが、予定を入れておいた社用車が緊急の用件(別の車で
事故を起こした奴がいて、その後始末に急遽使われてしまった)で使われており、
上司の了解を得て、自分の車で行ってよろしいということになった。
たまたまその日は2輪で通勤していたし、社を出るのが遅い時間だったこともあって、
用件が済み次第、帰宅していいと言われたんだ。
用務を済ませ、時間にゆとりがあったから、そのまま知床横断道路を走って
プチツーリングとしゃれ込んだわけ。
こんなときのためにも、日頃から点検整備は怠らないのがいいな~、などと考えながら
快適に飛ばしていた。晩飯は…たまには隣町でトドの焼肉でも食べようか、などと
単車の鼻先を羅臼町方向に向け、気分よく単車を疾らせていた。
まだライトを点けるには早い薄暮の時間、日没まで少し余裕がある、そんな時間。
やがて道は海沿いから離れ、ちょっとした峠に差し掛かる。タイトなコーナーを2つ、3つと
クリアして、再び海が見え始める辺りまで来たとき、
左斜め前、上空から、漆黒の何かが急降下してきた。
「な、な、何なんだ!!」
ややパニック気味にブレーキをかける。フロントがギュッと沈み込み、車速がガクッと落ちる。
同時に俺はその正体を見ようと上方に目を凝らした。
それは、俺のヘルメットをぎりぎりに掠めると、再び急上昇していった。
大型の鳥だ。鷲?鷹?それとも梟…は、さすがにないか。
再び急降下してきたそいつは、俺が無意識に鳴らしたホーンの音で降下をやめ、離れていった。
タバコを一服、気持ちを落ち着かせた俺は、今までよりも慎重に羅臼町の目的地を目指した。
後日、この体験を山好き単車好きな先輩に話してみた。
彼曰く
「お前さぁ、そのときいつものグレーの革ツナギだった?うん、やっぱりな。で、お前の単車、
ほとんど黒に見えるよな、ヘルメットも黒で、蛍光色で星描いてある奴だろ?
鷹か鷲かは判らないけどお前のその蛍光色、小鳥か何かと間違えて襲ってきたんじゃない?」
アスファルトの色に、単車とツナギの色が溶け込んで、鳥さんからみたら俺が蛍光で入れた
ワンポイントのマークが小鳥に見えたんではないかということだった。
俺は、その後すぐヘルメットにもっと派手な模様を入れて上空からも目立つようにしたのは
言うまでもない。