最短コース

255 :本当にあった怖い名無し:2009/01/09(金) 16:47:57 ID:7rR0CBcI0
恐くはないが、自分達的には不思議だった話。 
長文です。 

今から十数年前の話。 

高校に入り、原付の免許を取ったばかりの頃。 
免許取立てでもうバイクに乗るのが楽しくて仕方がなく、 
毎日のように放課後友達のA、B、俺の三人で走っていました。 

某地方の県なんですが、町の中心地から見て北側に山地が広がっており、 
その山へ1キロ程登ったところにAの家があります。 
町中を走ることに飽き始めていた俺達は、Aの家に毎日通うようになり、 
そこから曲りくねった山道を探索に行くことが新たな楽しみでした。 

その山は、北へ向いて登ると途中から道が枝分かれしてくるのですが、 
どう進もうと必ず、東西どちらでも山の出口に辿り着き町まで戻って 
来ることができるようになっていました。 

当時の俺の乗っていたのはJAZZとういう原付で、 
わかる人にはわかると思いますが、その車種にはガソリンメーターが 
付いていなかったため、ついつい燃料補給を忘れがちでした。 
ある日、いつものようにA宅を出発しようというとき、 
またガソリンを入れ忘れていたことに気が付きました。 

しかたなくその日は数あるルートの中から最短コースを選び、 
東側の出口から町まで戻り、ガソリンを入れに行くことに決めました。 
予定では約20分で着く距離です。 
最も走り慣れたコースで、更にその山の地理に最も詳しいAを先頭に 
A、B、俺の順で出発しました。 
ところが、ずっと舗装されていたはずの道が、気が付くといつの間にか 
荒れた獣道に変わってきたのです。 

明かに迷っていました。 
あたりはどんどん森に覆われ、次第に日も暮れ薄暗くなり、 
挙句の果てには小雨さえパラつき始めました。 
夏だったのですが、Tシャツ一枚だったせいかひんやりと肌寒ささえ 
感じていました。 
さすがにおかしいと思ったのですが、辺りの雰囲気の異様さに 
立ち止まって引き返すかを検討することすらビビッてできません。 
まだ携帯電話なんか持っていない時代で、あったとしても 
電波が入るわけもない場所で、公衆電話はおろか民家すら無いのです。 
既に30分以上走っており、今更引き返すには遅いとも思いながら、 
俺としてはこんな所でいつガス欠するかと気が気でない状態でした。 

そんなとき、ふと更におかしいことに気付いたのですが、 
俺達3人は東側の出口に向かって走っていたため、 
自分達から見て左側に山の斜面、右側に町の夜景が見えるのが普通です。 
ところがいつのまにか、その逆の右側に斜面、左側に低い森を見下ろす 
形になっていたのです。 

ですが、間違いなく方角は東を向いており、つまり 
いつのまにか町から見て山の向こう側を走っている 
ということなのです。 
他のふたりも当然気付いていたはずですが、 
それでも立ち止まろうとせず、無言で走り続けました。 

やがて、左側に見えていた森がだんだんと開けて来ると、 
自分達がかなり山の頂上付近まで登っていることに気付きました。 
そして眼下に町の夜景が見える場所まで辿り着いたのです。 
この時点で出発してから2時間は経っていました。 

そこから見える夜景は方角が普通とは正反対で、 
しかも明かにその夜景の規模自体が小さいのです。 
自分達の住んでいる町の景色ですから、見る方向が違ったところで 
そこが違う景色であることは一目瞭然でした。 
「県外じゃねぇ………?」 
ついて出た俺の言葉に二人が笑い、すこし空気が明るくなりました。 

すると、少し離れたところにエンジンかけっぱなしの車が停まって 
いることに気付き、よく見るとカーS○Ⅹをしてるじゃありませんか。 
それを見て一気に安堵感が漂い、 
「一服いれようか」ということで、皆たばこに火を点けました。 
(↑すいません。未成年でした。反省してます) 

再びエンジンをかけ走り出したのですが、そこから1キロも 
走らない頃に、カーブを過ぎた途端、見慣れた舗装された道が 
現れ、すぐに目的地だった東側の出口に着いたのです。 
同時に俺の原付がガス欠になりました。 

後日談ですが… 
あんなに不安で恐かった道でも、カーS○Ⅹしていた車もいたこと 
だし、俺らが車の免許を取ったら彼女を連れてドライブするには 
かなりの穴場なんじゃねぇか? 
ということで、現在までに何度もあの山へ登ったのですが、 
3人のうち誰ひとりあの場所に辿り着くことはできていません。 

何より、当時はまだ地理にも疎かったのですが、その後地図をどう見ても 
あそこで見た夜景の規模の町は存在しないのです。 
それに山の向こう側に辿り着くには、どう頑張っても3時間以上は 
かかる距離なんです。 
後で思えば、残り僅かだった燃料が2時間もったことも不思議です。 
数年経ってようやく3人が「あれはおかしかった」と 
話すようになりました。 

狐や狸に化かされたときには、煙草を吸うと逃げて行くという 
ような話を聞き、 
「あれはその類に化かされてたんだ」 
ということで今は話しがついてます。 

すいません、文章にすると説明しづらいです。 
駄文、長文失礼しました。 

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