山道をやってきた集団

819 :732:2007/12/26(水) 11:48:18 ID:QChCDdMm0
お久しぶりです。>732です。 
今回は、別の山先輩(広明さんとします)から聞いた話(戦前の出来事)をしますね。 

この方は、県内山間部(具体的には盆地)の出身です。 
広明さんが生まれたのは戦前ですが、その頃の子供達は皆、山や川に行って仕掛け針で魚を獲ったり罠で獣を捕まえて毛皮を得ていたそうなんですね。 

広明さんは特にそうした事にかけては子供の頃から達人で「鶏をシメるだろ、その後シメた鶏の首を使って狐やイタチを獲る。
その皮を剥いで売る。捨てるところなんて無いんだ。今の時代、そういうのは残酷だって言う人も居るけど、
それは豊かになった時代の連中が言う事だ。昔の人達は、みんな貧乏だけど一生懸命に生きてた。昔の日本に住んでたら、残酷、なんて言ってられない」という言葉が印象に残ってます。 

さて、そんな彼がある日の夜、山間部を流れる川に魚を獲りに行ったそうです。
山は真っ暗でしたが広明さんは慣れたもので、月明かりを頼りに、いつもの場所に向かってました。 

彼が山道をテクテク歩いていると、やはり山道を向こうの方から歩いてくる人影があります。しかも1人や2人ではなく、何人も居るようです。 
しかも全員、月の光を反射させている。 
「こんな夜に一体なんだ?それに、何で全員光ってるんだ…?」 
広明さんは直感的に「ヤバイ」と思い、山道を逸れて茂みに隠れたそうです。 

広明さんが茂みに身を潜めていると、その集団は更に山道を進んできて、やがて広明さんが隠れている場所まで達しました。
怖いもの見たさ、というか好奇心から、彼は茂みの影から、そっと彼等を覗き見ました。 

彼等の姿を見た時、広明さんは思わず声を上げそうになったそうです。 
は全員、甲冑に身を包んでおり、その鎧が月の光を反射させていたのです。 
明らかに、昭和の時代を生きている人々ではありませんでした。 

彼等はかなりの人数であるにも関わらず、一言も話し声が聞こえません。聞こえるのは、歩く音と鎧がぶつかり合う音だけです。 
中には明らかに身分の高そうな人も居たそうですが、その誰もが下を向き、顔の部分が影になっていて一切見えません。 

そうした人々が、何十人、何百人と山道を歩いているのです。一体彼等は何であるのか、どこから来て、これから何処へ行くのか…。 

何十分か何時間か。とにかく結構な時間を茂みの中で過ごした広明さん。 
彼等が通過し居なくなったのを確認しても尚、安心できずに茂みに隠れていました。彼が茂みから出たのは、周囲が明るくなり始めてからでした。 
当然魚獲りどころでなくなった彼は、早々に山を下って町に帰ったそうです。 

ところで、広明さんによると彼等幽霊の正体は、大体見当が付いているのだそうです。 

皆さんの中でご存知の方もいらっしゃると思いますが、日本が江戸時代から明治に変わる頃、幕府軍と官軍による「戊辰戦争」がありました。 
戊辰戦争に於ける東北の戦いにつては、白虎隊をはじめとする「会津の戦」が有名ですが、実はそれ以外にも戦いがありました。 

広明さんの故郷は先述した通り県内山間部の盆地ですが、そんな場所でも官軍と幕府軍による戦いがありました。 
広明さんが住む地域は官軍側で、そこに幕府方の軍が攻め込み、激戦が繰り広げられました。 

一時は優勢だった幕府軍ですが、援軍を得た官軍は勢い付いて一気に幕府軍を押し戻し、蹴散らしました。
相当な激戦だったらしく、広明さんが子供の頃にも当時の銃弾が、畑などから出てくる事があったそうです。 

広明さん曰く、自分が山道で見た幽霊の一団は進んでいた方角からいって、おそらく幕府方の軍だったのだろう。
自分達は敗れて死に、時代は移り変わったが、それでも尚、忠義を全うしようとしているのではないか…との事。 

幽霊は確かに怖い。怖いが彼等も日本人で、立場こそ違っていたが、官軍と同じく「家族の為、故郷の為、日本の為」という信念を持ち、戦って死んだ。 
だから怖がってばかりではなく、生きている我々が感謝して手を合わせてやる事が大事なんだ、と広明さんは言っておりました。 



855 :本当にあった怖い名無し:2007/12/27(木) 23:05:49 ID:U6s2j6f+0
>>821 
それ秋田と周辺の藩との戦かな。 
うちの近所にも、秋田藩の援軍に来て戦死した官軍の墓所があった。 



864 :732 ◆uGSyBm4tCE :2007/12/28(金) 15:35:44 ID:mr84Dqsa0
皆さん、ありがとうございます。気にせず、これからも時間を見つけて書き込ませて頂きます。あと、トリップを付けますね。 

>844 
山先輩は元々、私の親父の山友達です。皆さん高齢ですが、面白い話を沢山知っておられます。 
>855 
そうです。>732も>821も、久保田藩(今の秋田県)の話です。 

山先輩は全員県内の方ですので、私の話は全て秋田県内での出来事になります。 
今は時間が無いので無理ですが、後日、また別の山先輩から聞いた話を書き込ませて頂こうと思っております。

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