大きな岩

42:その1 02/12(火) 04:31 zrTmmti90 [sage] 
怪談でもなんでもないんだけど、スレタイ見てふと思い出した話を書いてみる。 

俺の父親の生まれ故郷(山間部に位置する)の生家(今はもうないが)から少し離れたところに、高さ3m・直径が最大で5mくらいの大きな岩がある。 
俺が子どもの頃、父親に一度その岩のある場所に連れてってもらったことがあるのだが、そこで父親がこんな話をしてくれた。 


江戸時代(おそらく後期)、ある領主がこの周辺を治めていたのだが、その領主の年貢の取立てがとても厳しかったそうな。 
そのため農民たちは非常に苦しい生活を強いられてきたのだが、ある年に不作に陥り、年貢用のお米を出してしまえば飢えで死んでしまう事態になってしまった。 
そこで農民たちは領主に年貢に出すお米の量を減らしてくれるように懇願したが、とても欲深かった領主は断固として聞き入れず、通常通りの年貢の量を要求した。 
領主にとっては単なる欲求でも農民たちにとっては死活問題であったため、怒った農民たちは立ち上がり、領主を追い詰めることした。 

ある日、農民たちは鋤や鍬などを持って一斉に領主の家に駆け込み、領主を捕まえようとした。 
突然のことに領主はびっくりして、山手のほうに逃げていった。 
逃げる領主、それを追いかける農民たち。しかし圧倒的に不利な状況のため、捕まるのも時間の問題だった。 
そして、領主の家からだいぶ離れた大きな岩の前で、領主は農民たちに囲まれてしまった。 
恐れ慄いた領主は年貢を納めなくてもいいと農民たちに言ったが、もはや怒れる農民たちの耳にその声は届いていなかった。 
そしてその岩の前で、領主は農民たちに殺されてしまった。 
後日、たまたまその(岩のある周辺の)土地を持っていた俺の先祖は領主が殺されたことを聞きつけ、その岩のある場所に向かった。 
そこには大量の血がベッタリついた岩と、領主の無残な姿があった。 
先祖は殺された領主を不憫に思い、僧侶を呼んでその岩の前で供養したそうな。 


父親はその話を父親(つまり俺の祖父)から聞いたらしく、代々その話は伝わっているらしい。 
少し前まで(その岩のある場所も含め)周辺の土地を祖父が所有していたのだが、ダム建設の話が持ち上がり(区画整理のため)祖父はその土地を売却した。 
そのうちその周辺はダムの底に沈むらしい。 

最初聞かされたときは驚いたが、どうやら嘘ではないらしい(そもそも嘘をつく理由もないが)。 
そういや、岩を見たときに一部分が黒くくすんでいたのだが、もしかしたら血の跡だったのかな・・・(んなわけないか)。 
できることなら沈む前にもう一度その岩のある場所に行ってみたいものだ。 

長文・駄文スマソ

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