スリッパ

407 本当にあった怖い名無し sage 2009/03/07(土) 00:32:51 ID:CCkSw+DF0
初カキコです。長いかもしれません。 
俺の幼馴染の女から聞いた、体験話。本人は二度と思いだしたくない話だそうです。 
俺とその女(仮に、Oとする)が通ってた小学校はできたばっかりの新しい学校で、施設の勝手も普通と違ったし、そもそも廊下がない、という不思議な構造をしていた。 
(オープンスペースというらしい)つまり各階に大きい部屋がひとつあって、それを4つに区切って教室ってことにしてた。その大きい部屋の出口にひとつづつ(計二個)トイレがあった。 
で、そのOは放課後まで委員会の仕事かなんかで学校に残ってたそうだ。 
一緒に帰る友達ももういないし、用を足してからすぐ帰ろうと思ったらしい。 
他の施設と同様、学校はトイレもすごい綺麗だった。全面が水色に統一されたタイルで、スリッパもみんな水色。 
とりあえずOは真ん中の、洋式の個室に入った。新式と言ってもトイレの構造まで変わりはしない。 
ドアと床の間にちょっと隙間がある、なんの変哲もないトイレだ。 

と、しばらくすると誰かが入ってきた。スリッパの音と気配で、Oはそう思った。 
そのトイレは3Fで、高学年しかいない最上階。 
さっきまでは誰もいないと思ったけど、委員会の部屋に誰かが残ってたかもしれない、とOは納得した。 
ペタペタという音がトイレに響く。その音は一つ目の個室を通り過ぎ、Oの個室を通り過ぎ 


ようとして、突然止まった。 
おや、とOは思った。トイレの個室は全部で三つ。入ってひとつめ以外はすべて洋式だ。 
ひとつめの和式トイレを見て入らなかったのなら、三つ目に行くハズだ。 
と、Oの個室に 

「コン、コン」 

とノックの音が響いた。そうか、外からじゃ人が入ってるか入ってないか分からないか、とOは思った。 
すぐさま「コン、コン」とノックを返す。そこで、外の子は三つ目の個室へ行くハズだった。 
が、 

「コン、コン」 

またノックが返ってくる。Oは不審に思った。友達の悪戯だろうか?でも、みんな委員会には入ってないし・・・ 
怒鳴りつけるにも、知り合いじゃなかったら恥ずかしいので、仕方なくまた「コン、コン」とノックを返した。 

「ドン!ドン!」 

返ってきた音に、Oは心臓が跳ねあがるかと思った。ドアを壊そうとするかのような勢い。明らかにノックの音ではない。 
外からの衝撃で、個室のドアはきしみ、壊れるのではないかとOは心配になった。 
ここまで悪質ないたずらをする友達は、Oにはいない。そう感じたOはいよいよ気味が悪くなり、すぐに出なきゃ、とスカートを履こうとした。 

「、、、、、、、、あ」 
そこでOは見てしまった。 
トイレの壁と、床の隙間、その間に。 

スリッパを履いた、裸足の足があった。 
個室に侵入しようと、限界まで突き刺さった足。 
いやに白い、生きている人間の足とは思えない肌の色だった。 
「直視していたら気が狂う」そう思ったOはすぐ視線をそらした。あんなものがあってはならない。
「確認など絶対にできない」 
Oは泣いた。泣きながら、目を瞑り、耳を塞いで耐えた。 
なんで自分がこんな目に!そう思いながら、Oには耐えることくらいしかすることがなかった。
体が震え、嫌な汗が出てくるのを感じた。 
なにより恐ろしいのは、目の前のドア越しにいる「なにか」からはまったく音がしないことだった。
呼吸する音も、動く音すらも。 
Oの噛み殺した嗚咽だけが、夕方のトイレに響いていた。 
5分くらいだろうか。10分かもしれない。 
しばらくして、Oはおそるおそる目をあけた。視界には、さきほどの隙間、白い足・・・ 
何もない。ドアの下には水色のタイルが夕日を受けて光っているだけだった。 
放課後のトイレは、もとのように静まりかえっている。先ほど感じた「なにか」はもういないようだった。 
安心したOはおそるおそるドアをあけた。何もいない。 
が、視線を下したOは、はっと息をのんだ。 

彼女がいた個室の前に、一対のサンダルが並ぶように置いてあった。 
その時、Oは思い出した。そう、さっきの足は「どんなスリッパを履いていたっけ」と。 
Oは泣きながら家に走り帰った。残されたものから逃げるように。 
水色で統一された空間にあるまじき、「赤色のスリッパ」から。 

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