猿の立ち会い

351 名前: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2005/05/08(日) 09:07:17 ID:+rB4sGPS0
遠い昔の話ではない。 
ふもとの村を離れ、山中の小屋でひっそり暮らす夫婦が居た。 
元々は、病気がちの妻のため、薬効ある温泉の近くで暮らす事が 
目的だったという。 

彼らの小屋に数頭の猿が近付くようになった時期や、その理由は 
分からないが、猿が彼ら夫婦を警戒していないのは確かなようだった。 
餌付けをしたわけでもないが、小屋の近くに猿が居ついていた 
病気がちだった妻も元気になり、山仕事に出かけるまでになった。 

妻は妊娠し、臨月を迎えた。 

梁に縛り付けた荒縄につかまり、立ったままでの出産となったが 
これは、当時としてはそれほど珍しい事ではない。 
珍しかったのは、出産に猿が立ち会っている事だったろう。 
部屋の中に何頭かの猿がおり、じっと出産の様子を見つめていたが、 
この肝心な時に夫は出かけており、不在だった。 
猿の助けなどあるはずもなく、妻は一人で出産に臨んでいた。 

やがて赤ん坊の頭が見え、いよいよ生まれるという頃合だった。 
一頭の猿が近付き、妻の股間から生まれつつある赤ん坊に手を伸ばし、それを引き出した。 
赤ん坊が泣き声をあげ、猿が赤ん坊の周りに集まり、大騒ぎとなった。 

妻はその場に倒れこみ、次にすべきことに備えて息を整えていた。 
猿が騒ぎ立てる声で、赤ん坊の泣き声が聞こえないほどだったが、 
赤ん坊は産まれてすぐに元気な泣き声をあげており、ひと安心だった。 
赤ん坊を囲む猿の輪が崩れ、四方に散り、なお騒ぎは続いていた。 

やがて猿の騒ぎが収まり、赤ん坊の顔を見ようと、妻は身を起こしたが そこに居るのは猿ばかりだった。 
顔と手を血だらけにした猿。 

猿は後産の胎盤まで平らげ、引き揚げていった。 

話してくれた老婆の語り口が、忘れられない。

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