取り立て屋の末路

760 本当にあった怖い名無し sage 2012/09/04(火) 00:24:58.26 ID:vloQMlHg0
知り合いのヤクザから酒飲んで聞いた話 
ヤクザっても正式な組員じゃないんだけどな 
そいつは十年くらい前まで兄貴と組んで闇金の取り立てやってた 
ずいぶん非道いこともしたらしい 
町の工場を経営してた老夫婦の前で壁を蹴ってたら 
そいつらが自己破産するって言い出したから 
あらかじめ調べてた息子や娘の住所をしゃべって 
んじゃあこいつらのとこにも行くから 
こいつらの勤め先にも行くからって言ったらしい 
もともと闇金自体が違法だしそのあたりはあんまり関係ねえからな 
それで次の日ジイさんは踏切で鉄道自殺 
バアさんは行方知れずになった 
工場や家は何重かに抵当に入ってて表の借金に取られたが 
そいつと兄貴は息子らのとこを回ってどうにか金は回収した 

そいつの兄貴は墨を入れてて 
それが趣味の悪いことに四谷怪談のお岩さんと伊右衛門の図柄 
もう彫ってからだいぶんたつんだが 
お岩さんの目の上のはれが右の後ろ肩にあって 
そこにできものができてひどく痛む 
んで医者にいくまでもないだろうってんで 
そいつに小刀で切らせたんだが 
そしたら血膿に混じって明らかに人の歯としか思えないものが 
ボロッと出てきた 
それから兄貴の背中はできものだらけになって 
今度は医者に行ったが 
やっぱり切除するたびに人の歯が出てくる 
それも虫歯の治療痕まである成人の歯で医者も相当困惑したらしい 
それでレントゲンを撮ってもなんもない 
だけど次の週になればできものができて切れば歯のかけらが出てくる 

兄貴は入院してさんざん検査され 
その過程で重い膵臓癌だかにかかってることがわかった 
んで毎度見舞いに行くたびにベッドの下に何かがいるから見てくれって言われて 
のぞいてはみるんだけど何もいない 
そらそうだよな 
別にのぞかなくったってベッドの下は素通しで見えるんだし 
毎日掃除のおばはんが来てるんだし 
んでも兄貴はベッドの下に怖ろしいものがいて 
毎日夜中に腰のあたりに噛みついてくるって言い張ってた 
あの強面の人が歯をガチガチ鳴らして怖がってたっていう 
医者は痛みや不安からくる幻覚か特殊な薬の副作用だろうと説明したらしいけどな 
その頃にはもう歯は出なくなってたが背中の自慢の入れ墨も 
できものの痕で非道い有様だったらしい 

んで病院には兄貴のかみさんや子どもも見舞いにくるんだが 
そいつが姉貴から家の中で異臭がするって相談された 
兄貴の家は郊外の一軒家で都会じゃないから土地は安いが 
建てたばかりの瓦屋根の立派なやつ 
それでそいつの他に2~3人で行ってみたが 
たしかに庭から家の中から腐臭が漂ってる 
もう鼻つままなきゃいられないくらい 
それで手分けして調べたんだが 
野良犬の死体でもないかって縁の下にもぐってたやつが悲鳴をあげた 
何が見つかったかっていうと 
上で書いた工場の行方不明になってたバアさんだ 
裸足の着物姿で縁の下で上を向いて真ん中ら辺の太い柱に齧りついてた 
腐敗が進んで骨の見えてる部分もあったし柱のわきには歯がぽろぽろこぼれてたっていう 
こう書けば兄貴の背中から出てきた歯がそれかと思う人がいるだろうが 
照合して調べるなんてことはもちろんしていない 
んでこれは警察には知らせず内々に組で処分したらしい 
それはヤーの家で死体が出てきて疑われないわけがないし 
家の中にはいろいろとまずい物もあったんでな 

兄貴はそれから一週間ばかりで死んだ 
最期はずっと薬で眠らされてたらしい 
・・・この話で間違いなく事実なのは取り立てでジイさんが死んだことと 
バアさんが行方不明のままなこと 
そいつの兄貴が癌で死んだことだ 
歯が出てきたことやバアさんの死体が縁の下から出てきたのは嘘かもしんねえ 
しかしそいつがそんな作り話をする意味もわかんねえけども 
とにかくそいつはカタギになったわけじゃあねえが 
今は馬関係のわりと楽なシノギをやってる 
おめえに祟りはねえのかって聞いたら下を向いて笑いやがったな 

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