福助

0855 福助 2012/03/03(土) 20:40:15.96 ID:7gorCAO20
私の実家は明治だか大正だかの時代まで呉服屋を営んでいたらしく、
私が幼い頃はまだその当時の看板が家の裏手の縁の下に置いてあった。

幅一間程もあろう立派な看板で、屋号が書かれている中心に頭でっかちな福助が笑っているというものだった。
初めて見たときは驚いたものだ。なんせ忍び込んだ縁の下の影の中で所々黴びて朽ちかけた福助と目が合ったのだから。

なぜあんな気味悪い看板を取っておくのだろう?当時存命であった祖母に聞いた事があった。
祖母からはただ、「捨てようとすると泣くから」とだけ返ってきた。
私はそれがとても恐ろしく、それ以上細かい事は聞けなかった。

祖母は既に亡くなり、家も建て替えてしまったため、事の真相や福助の所在を明らかにする術はない。

ただ祖母は、捕らえたネズミを罠ごと縁の下に置いておく事があった。
元気なままだと処分しづらいそうだ。

福助も、年月をかけ弱らせるために、縁の下に置かれていたと思えて仕方ない。
どう処分したかは知らないが。

おわり

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