面つけたまま取り憑かれたように踊り狂う女
522 :本当にあった怖い名無し:2011/09/15(木) 05:32:12.09 ID:zUn51TeF0
大学時代体を楽器にする系統のサークルを創立したことがある
一年目はサク認定最低限人数学食で知り合った先輩も入ってくれたのに創立者の俺が会長つう変な状態だったわ
二年目には+2名
三年目には前年度にマウスパーカッションやってたやつがコンクールで入賞して
入会希望者も多めにきてやっと自治会から睨まれなくなった
つうかあそこのやつらって管理能力の成績が就職のためにほしいから
企業の再三割れ部署のリストラよろしく容赦なかったわほんまなかった
って愚痴きかせてもうて悪かったがまあここ大事なところなんで
ま、こうして苦労しながら頑張ってると見てくれる娘もいるもんでな
お恥ずかしながら後輩の口笛の娘と付き合っていた
半同棲に近くよく泊まりにいってたんだけど
ヤリ疲れて先に寝ちゃった彼女に布団をかけてやって
ちょっくら酒でもいれないとまだ猛って眠れそうもねえやって
そんなふうに思ってコンビニにでかけようとするとたびたび変なもんみたよ
マンションの低層階がかなり有名な歌舞伎一門の稽古場兼自宅兼個人所有のこじんまりした演芸場になってたんだが
時折、面つけたまま取り憑かれたように踊り狂う女に出くわした
歌舞伎じゃなくて能っぽいかんじなんだよな動きとか声の出し方とか
決まって真夜中のマンションのロビーあたりにいるんだよ
変わった娘だなあって思いながらもこれも練習か何かかと思うようになって
何度目かに出会った時はじっくり見てみたんだが
俺はああいう舞踊はようわからんけど手首の返しとかの所作が
流麗つうの?かなり上手なんだよ
ああ、やっぱり練習に来てる人か何かだと思うようになった
見えない所の努力ってジロジロみるのも失礼かなと思ってたんだけど
本人はこっちなんかぜんっぜん気にしてないもんでさ
だから、一度見てても文句も言われなかったあとは、見かけるたびに、見とれてた
そうすると不思議なものでな
独特の、腹の底から出す発声の合間にだな
とても聞き心地のよいアルトが混じったり
面の下だけは全然みれなかったり
そんなところにさ 凄いミステリアスなものを感じるわけよ
舞踊とかが純粋に好きなやつがいたら大変申し訳ないんだが
その踊りの合間のちらりちらりと聞こえてくる女性としての踊り手のことが
気になって、気になって、彼女に満足させてもらえなかった獣欲がぶりかえすつうか
お恥ずかしながらロビーの管理人室直ぐ前のソファに座りながら
ぴたっと膝と膝をあわせて不自然な前傾姿勢がデフォでした
真夜中に人知れず鍛錬を積む努力家っていう先入観とミステリアスなイメージが神秘的な魅力のように感じられちゃってたんだなあ
悪いなあ男って妙にロマンチストな所があるものなんだよ
こんな会話したこともないうちに勝手にイメージ作られても迷惑だよな
三年の5月には後輩から別れ話を切り出された
性の不一致ってのが直接の原因かな
彼女はほとんどはじめっから俺が満足できてないことはわかってなかったみたいだし
それが、どうも彼女のプライドをじくじくと傷つけてたみたいなんだわ
かといって彼女は翌日に影響するような楽しみ方もしない真面目な娘で
いつしか、俺のほうが悪いって考えになったらしい
不思議と俺は悲しくなかった
というより部屋に呼ばれる回数も減ってたし別れてサインも増えていたし
正直なるべくしてなったなというかんじ
事前に心の準備ができてただけじゃない
あの能の舞手がいるマンションにいけなくなることのほうがよほど重大だった
あんな夜遅くの時間は警備も厳しいし、マンションの玄関前のインターフォンで中の住人から許可もらえなきゃ
ロビーにすら入れないからな
それで思い切って後輩にいってみようとおもったら
銀杏並木の向こうにこっちを伺う演劇部の時期主演と噂された男子学生の姿を見つけた
心配そうな顔つきだったのでひょっとしてと思った
新しい彼氏がいるのときいてみると、自然なかんじだから軽快もされずにそうですといってくれた
これでいいやすくなったものだから
実は俺も、気になってる人がいるって告白した
そうしたら後輩が喜んじゃってさ
これからもいい先輩と後輩でいれますねってちょっと涙ぐんでたな
ひょっとしたら関係がぎくしゃくすること気に病んでたのかもしれん
恋の相談するかもしれないけどいい?っていったら快諾してくれた
12月に入って
周りはカップルとカップルをやっかむシングルになりつつあった
いややっかむようにみせてネタにしてるシングルか
ゼミ仲間がシングルになった俺を魔のトウェンティーフォーホラー合宿なるものに誘ってきた
行き先は名称おぼえてないが
確か三重の方の俗称売春島とかいわれてるとこだったと思う
大学のPC室で調べたらそんなんばっかりひっかかってたし
今ぐぐってみたら渡鹿野島とかいうとこがそういう俗称ついてるって書いてあるんでそこかも
閑話休題、んで聞いたこと無い場所だったし、なんでそんな聞いたこともない場所なんだよ、とかいってたらだ
唐突にぼそぼそと声が後ろからかけられた
振り返ってみると黒い髪を三つ編みにした清楚そうな印象の娘がいる
内気なんだかやたらと顔を赤くしてて、まわりが急速に冷めてったのがわかった
そら魔のトウェンティーフォーホラー合宿さそった相手が参加資格失いそうな場に立ちあってるんだもんな
場所うつそうかって声かけて二人で礼拝堂の裏へGOした
用件は大体察してたんだけどね
かわいそうとは思ったけど、俺からは核心については触れなかった
この時の俺はあの真夜中の頑張り屋さんに心底興味があったしホレるかどうかはともかく
関係が冷える前から、その人の練習覗きやってたわけで
後輩になんて切りだせばいいのかわからなくなってずるずる何ヶ月も相談先延ばしにしてたくらいで
だから、うん、できるだけさっぱりとした断り方をしたかったんだ
内気っぽさはすぐわかったから、その性格で、自分からはっきり言い出せるようなら
すこしきつめに断ってあげないと、未練ひきずってきついかもしれないしとか、下手くそなりに一生懸命考えてた
自分からどのくらい短時間で言い出せるものか
逆にどれだけ長時間言い出せなくて、それでも言ったとか
そういうところから推し量って、断り方の対応を決めようと
結局まあ、十分ぐらいあれこれ世間話したかなあ
キャッチボールもこっちから投げっぱなしが多めだったけど
こりゃ無理かと思って帰ろうとしたら嫌がられるし
はっきりしない娘は余り好きじゃないと言って取り敢えず自販機に向かった
で、戻ってみたらだ
持参したボストンバッグから般若面を取り出すところだった
片方の眉が消えかかってるくらい年季のはいった古いやつ
見覚えあるどころか、俺はその面の下にすげえ欲情をずっとおぼえてきたんだよ
稽古の時はアップにしていた髪型
面の裏からくぐもって聞こえた声
和服だとわかりにくい体型
その格好になるまでは、同一人物とは気づかなかったけど
面を被った瞬間に、あのアルトがさらに重々しい胸に圧迫感のある声に変わった
持ってもいない扇をもった手つきで足踏みとするするとした足取りで円を描くように歩いたりで何かを表現しようとしてたよ
でも俺は、その時、ただただ、別人が乗り移ったかのようなその振る舞いに、呆気にとられていたし
正直、怖かった
やましいところがなきゃ何も怖くなんてないんだけどさ
目の前の娘=あの頑張りやさんてなったら
その懸命な練習姿に10?dハンマーものの感情いだいてたりしたんだぜ
しかも真夜中に人目を忍んで練習する人をガン見する無神経さ
考えれば考えるほど、自分の心と向かい合うハメになって
顔中に汗が浮かんでいくのな
うあ、最悪、なんだこれ、うわ、最悪って
舞い終わってから
お分かりいただけました?ってきかれた
正直能はさっぱりだから
つうか古めかしい言葉も半分も理解できてなかったとかなんとかかんとか
そんな俺の高校の頃の古文の成績はレッドホット
いや全然、とつっかえながら言うのが精一杯だった
そうしたら、今のはなんたらかんたらのうんたらかんたらが愛した男性にどうのこうのといううんちくがはじまって
つまりは彼女なりの求愛であるのだ、と三分くらいかけて非常に遠まわしに伝えてこられた
あのがんばり屋の中身はこういう人だったんだって理解した後に
これまでは全然意識してなかった、好みのタイプの境地が拓かれた気がした
内気な子って正直俺その時までダメだったんだな
でも、感じていた印象に輪をかけて、めちゃくちゃミステリアスつうかズレすぎててわかんねえ
それがなんか、すっごい面白い
俺のほうはさ、無神経な俺の振る舞いを知られてたりとか
そんなこと気にして真っ赤になってたのに
まったくそんなところ相手が気にしてないんだから
だから俺大笑いしてさ。いいよ、付き合おう。でも、君、見るからに男性経験なさそうだし。失敗にならないように、最初は仲よすぎる友達からはじめない?っていうことにした
彼女は頷いた
それでつきあいはじめた
段々と彼女のことがわかってきた
歌舞伎の名門に住み込みで弟子入りしている父親のこととか
能が好きなのに、歌舞伎の手伝いばかりさせられることが嫌だったこととか
特に、歌舞伎は女が舞えるものではないらしくてな
舞えたなら、我慢もできたそうなんだが…
能をやると、お前は歌舞伎のどこかの一族に嫁ぐんだよ、とか父親が荒れるそうだ
そんな父親の目を盗んで、真夜中に独学で稽古をつける姿
印象どおりのものすごい内気さだったよ
彼女にとっての俺が美化されすぎなとことかね
俺自身は、ただ口笛を思う存分吹く場所がほしいっ、て理由で自分のサークルをつくりあげたわけなんだけども
それを彼女はまた古臭い演目でごじょーのなんちゃらにでてくるなになにさんだかに似てるとかいうわけだ
でもつきあってるうちに段々普通の女子っぽくなってきた
というより何を言うにも歌舞伎の演目とか能の演目に例えるのは
そういう筋の人に気に入られるように、どうも、調教された結果だったらしい
父親にそうとう厳しく育てられてたってことが段々とわかってきた
それで、いつものように、お互いの芸についての話してるときに
この父親の厳しさの話題にうつって
「ひょっとして、秘めた父親への反発心から、あんな凄い迫力のある舞になんのかねえ」
なんてちょっとずけずけとした物言いをしてしまったんだな
そうしたらだ
「いえ。あんなふうにまえるのはあの般若の面の時だけです」
「能の世界では、面は内なる神を映すとも。だから面との相性ってあるんですよ」
ぞっくうって変なタイミングで背筋が凍った
般若面と相性がいいって、どういう意味だよと
内なる神が般若ってこと?ってもう直感めいた何かだな
四年になって
ほとんどサークルの為にだけ大学の敷地に顔出すようになった頃
別れた後輩からよりをもどしたいっていう種の懇願を受けだした
俺は隠し事はしない方なので
メールがきたときに彼女もいたので包み隠さず言ったのさ
もちろん断るとも添えてね
けど、後輩が半ストーカー化しだしちゃって
ついには彼女と一緒にテラスでおしゃべりしてたところまできちゃってね
この時に俺は内なる神の意味を知った
凄い形相だったよ
楚々として、内気な性分がまるで嘘のようだった
別れてよっていう後輩の前で低音でものすごい大音量で一括
その時なんて発声したのかはまったくわからなかったけど
一瞬で膀胱がきゅきゅっといってさきっちょからちょろっといくようなかんじだった
テラス結構広かったんだけどそこにいた全員が完全にビビってた
「自分から振った癖に!」
「夫婦みたいに仲睦まじくしてた癖に捨てたのに!」
「他にいいお付き合いできる男の子だっていた癖に!」
「ふらふらとまたこっちにこないでよ!」
へたっと後輩が尻を地面にすりつけた
真っ青になってた
まさに嫉妬に狂った鬼女ってかんじ
そんな目で元彼女を睨みつけたら
「お邪魔してごめんね」
半ストーカーまでなってた後輩が萎縮して立ち去っていったよ

