老人が一人庭で暖をとっていた

493 :どっちかというと落語1/3:2011/08/01(月) 07:46:39.50 ID:LNz3L/9x0
時は江戸冬に近づき少し寒く感じる季節老人が一人庭で暖をとっていた。
するとのそのそといかにも寒そうにゆっくり庭を猫が歩いていた。
長年毎日のように見かけるその猫に老人は「さぞさむかろう暖をとらせようか」
と猫を手招きしようとしたがしかし老人はぴたりと動きをとめた。
猫の見つめる先には一匹の弱ったかまきりがもそもそとうごいている
幾分狩りの真っ最中だろうとじぃっとその様子をみているとすぐさま石弓にでも弾かれたようにばっと猫が飛びかかったしかし相手も必死である
猫に気付きさっと逃げてしまった。
その時どこからともなく「畜生.....」と聞こえた気がした

老人はむっ?と後ろを振り向いたが誰もいない家の周りも閑散としている
妻もとっくに死んでいる。
ただ目の前いる猫を含めれば話はべつである。
せっかくの獲物を逃した猫がいつものようににゃあと老人の足元にきてぴょんと膝の上に乗る。
可愛らしいその姿を見ておおよしよしといるつもなら喉を撫でてやるが老人には先程の声の主はだれだろうかということで頭の中は一杯であった。
やはりこの猫の声なのだろうかいやそんなことはない
だが他に誰がいようか確かめてみるのもまた面白い

となにを思ったか火鉢に刺さった火箸をもち猫の首を食いっとつかむと物凄い剣幕で「おのれ畜生の分際で言葉を喋るとは奇っ怪な奴よもや妖怪の類ではあるまいな!?」と詰め寄った。
すると猫は驚いた様子で
「お待ち下さいこれまでにこの私が人の言葉など喋ったことがありましょうか」
と訴えただが老人にはそんなことはどうでもいいただただ人の言葉をべらべらと喋るねこに唖然としている。
その一瞬すっと緩んだ手の締まりに猫は老人の手を抜け塀を越えて何処かへ行ってしまった。
その後からその猫を誰も見ていない。

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