ムーミンは妖精なの?
303 :1/2:2010/11/26(金) 22:49:50 ID:i6JvCjGC0
半年程前の体験。
当時、広島の県立美術館でムーミン展が開催されていた。
その日、丁度就活の関係で広島を訪れていた俺は、会社の面接が終わった後一人美術館を訪れていた。
親子連れや老年のファンが多い中、一人リクルートスーツをピシッと着こなしていた俺は相当目立っていたと思う。
ちなみに原画展だった。作者のトーベ・マリカ・ヤンソンはイラストも描いていたから。
入館者は発表年順に壁に飾られた原画を、順路に沿って、まるでアリの行列みたいに一列になって進みながら眺めていた。
で、俺もその行列に加わっていたわけだが、俺の後ろに親子だろうか、女性と小さな女の子が並んで手を繋いで原画を見ていた。
女の子は小学校に上がる手前くらいで、しきりに母親に尋ね、母親は優しく返答していた。
「ねえ、ムーミンは妖精なの?」
「そうよ。ムーミンはね、ムーミントロールっていう妖精さんなの」
「耳があるよ。犬じゃないの?」
「犬じゃないの」
盗み聞きする気は無かったが、何となく微笑ましかったのと、ムーミン=犬発言がツボに入ってしまい、俺はその親子の会話に密かに耳を傾けていた。
「ムーミンには、羽は無いの?」
「ムーミンはそういう妖精じゃないのよ」
「羽があったら、妖精じゃないの?」
「ううん。羽のある妖精もいるのよ」
「ムーミンは、白くない?」
「うん。ほら見て、白くないでしょ」
「白い妖精もいる?」
「そうねえ、いるんじゃないかな」
それから女の子は母親にいくつも質問をしていたが、しばらく経った後、「そっかぁ」 と、とびきり元気な声でこう言った。
「それじゃあ、おじいちゃんの部屋にいるのも、妖精なんだ」
その後しばらく女の子は母親に妖精の姿形を一生懸命説明してあげていたが、ショーケースの中に展示されたミニチュアのムーミン谷の模型を見つけると、目を奪われた様で一目散にそちらに駆けて行った。
はしゃぐ女の子と、その後を不安げな顔をして追う母親の姿が印象的だった。
女の子が言うには、寝ているおじいちゃんの上を何匹もの白いひょろひょろとしたモノが飛び回ってたそうだ。
それから俺は展示物を一通り見終わり。来て良かったという感想と、あの子のおじいちゃんは大丈夫なのだろうか、という思いを土産に会場を出た。
オチは無いが、その日受けた会社は最終選考まで残った末に落ちた。

