なかなかいい部屋だ。

338 :本当にあった怖い名無し:2010/04/08(木) 09:50:54 ID:flm1jhNEO
【日曜日】
新しい部屋に引っ越した、新築のアパート。
家賃は少し高めだが職場には近い。
「なかなかいい部屋だ。」
明日は仕事だ。まだ荷物は片付いてないが引っ越しで疲れたので、早めに寝る事にした。

【月曜日】
目覚めた時からほんの少しだが違和感がある。
何かは解らない、ただ漠然と『いつもと何か違う』そんな考えが頭から離れない。
『引っ越したせいだろう。』そう思い、仕事に出かけた。
しかし、いつもと同じ職場なのにやはり『いつもと何か違う。』

【火曜日】
昨日感じた違和感が、ほんの少しだが解った。
『誰かに見られてる』誰なのかは解らない。
しかし、視線を感じる。背後から俺をじっと見ている。
振り返っても誰も居ない。

【水曜日】
視線が気になって眠れなかった体が重い、ふと『女がいる?。』
一人暮らしで彼女もいない俺の部屋に?『あり得ない。』
しかし、はっきりとした確信があった。姿は見えない。
『女が背後から俺を見ている。』

【木曜日】
女の気配は消えない。また一睡もできなかった。
出勤の時間だ、支度をしようとしていると。
『早紀……?』
寝不足ではっきりしない頭の中に、その名前が浮かんできた。
俺はそんな名前の女は知らない。
ただ確信した『早紀と言う女が背後から、俺を見ている。』
俺はおかしくなったのか?

【金曜日】
寝不足から体調が悪い、仕事も手につかない。
寝不足なのに、眠れない。
早紀と言う女の気配は消えない。じっと何かを訴えかけるように俺を見ている。
「お前!何なんだよ!!」誰もいない部屋で、大声をあげていた。『和室…?』
何故だか解らない『和室に何かある。』

【土曜日】
相変わらず眠れない、体調もよくない。
引っ越し荷物が放置したままだったことをおもいだす荷物は昨日『何かある』と確信した和室に詰め込んである。
俺は思いきって、和室の戸を開けた。
不意に早紀と言う女の気配が強くなった。
「ここに居るのか?」
『そんなバカな…。』
当然、誰も居るはずがない。俺は気を取り直し荷物の整理を始めた。
早紀と言う女の気配は消えない。

【日曜日】
「もうこんな時間か」
ふと時計を見ると、日付が変わっていた。荷物も粗方片付いた
「そろそろ寝るか……ん?」
なぜ気付かなかったのだろう和室の隅に同じ大きさの箱が五つ残っていた。
「?……こんな箱あったか?」
俺は五つの箱の中の一つを開けてみた。
中には黒いゴミ袋、持ち上げるとズシリと重い。袋をほどいてみる。
「…!?…なっ!何だ!!……」
袋の中には生首が入っていた。
一瞬作り物かと思ったが違う、20代前半と思われる女の生首だ。
俺は何かに突き動かされるように他の箱も開けてみた。
中にはそれぞれ両手・片足・胴体が入っていた。
初めて見る本物の死体、しかもバラバラに切り刻んである。
時間が経っているのか、匂いも酷い。吐き気を覚えトイレに駆け込んだ。

どれぐらい時間がたっただろう。
少し落ち着きを取り戻し、和室の段ボール箱に恐る恐る近づき覗き込む。
生首が視界に入る。
「早紀?……!?はっ!!」
俺は脳裏に浮かんだ光景に愕然とした。
いきつけの飲み屋、そこで偶然知り合った女、早紀。
意気投合する二人。
俺の部屋で飲み直す二人。
泥酔した早紀の首を絞める俺。
息絶えた早紀をバラバラに切り刻む俺。
スライド写真のように、次々と浮かんでは消えて行く。
「…俺が殺した…そしてバラバラに…う…うわあぁぁぁ!!……」

俺が引っ越しをした理由。

『や………お……だし……ね…』
「…!?」
誰かの声が聞こえた。いや、この声は知っている早紀だ。
早紀の声が聞こえた。生首の方に目を向ける。
「…ッ!?」
先程まで閉じられていた瞼が開いている。
それだけではない、目が俺の顔をじっと見ている。
その目は白く濁り、生気は感じられない。
だが視線は、はっきりと俺を捉えている。
紫に変色した唇がゆっくりと動き出す。

「やっと思いだしたわね」

前の話へ

次の話へ