審判のための講習会

709 :1/3:2009/09/12(土) 11:37:24 ID:YMZchXMT0
>>703、>>705
ワロタw
大丈夫、お前らまだ若い・・・
その恐怖に比べたら全くほんのりもしないかもしれんが思い切って投下!


俺は中学と高校でバスケ部に入っていた。
年がバレるが、高2の時に3Pシュートが導入され、
同時にチームファールやら30秒ルールやらも変わり、
大幅なルール改正になった。
うちの顧問の先生は県大会の決勝で審判できる資格を持っていて
その関係で俺達が「審判のための講習会」でモデルゲームに駆り出された。

普段なら有り得ないが、相手は社会人ばかりの草バスケチームだった。
オッサンばっかりで余裕だなと気楽に臨んだ。
向こうのベンチを見たら何枚か余ったユニフォームがイスにかけられていた。
人数少ないんだな・・・と何気なく思った。
一番上に4番のユニフォームが乗っていた。
4番はキャプテンナンバーだから、キャプテン不在は気の毒だなと仲間と話した。
やっぱり社会人はいろいろ大変なんだなと。

試合が始まると、案の定、体力勝負のスポーツで毎日走りこんでる俺達と
草バスでは動きに差が出る。
どんどん点差も開き、いつもはベンチの連中まで満遍なく出たり
かなり楽な展開だった。

後半(もちろん、まだクォーター制ではないw)は3年引退後を見越した
新チーム体制でスタートした。
自分達が中心になって出るということに不安半分、ワクワク半分、気合が入った。
だが、何となく攻めにくい。
慣れたマンツーマンじゃなくゾーンを敷かれてるからか?
何だか壁が厚い気がする。
それでも何てことない2・3ゾーンなのに・・・いや、3・3?
なんで6人居るんだ?
でも、よく見るとやはり5人。

公式な試合じゃないとは言っても、コートに6人入れるわけない。
全員が動き回ってるんだからきっちり数えられない。
講習会でのゲームだから、参加してる審判への説明のためにしばしば時計が止まる。
ファールやボールアウトでも、もちろん普通に止まる。
その度に見てみるが、やはり5VS5。

フリースローの時に仲間にチラッと聞いてみた。
「なあ、何かおかしくねーか?」
「お前も感じてた!?俺もなんかおかしいと思ってた」
「絶対1人多いときがある・・・」
ゲームが進むにつれてだんだん分かってきた。
多く感じるのは相手がディフェンスの時。
残分も少なくなってきたとき、俺は相手のゾーンの隙をついて切り込み、
何人か引きつけたところでガラ空きのはずのハイポストにボールを入れた。
ポストにはぴったりついてるディフエンスが居た。
知ってた。
なぜなら、俺が突っ込んだとき、胸に『4』が貼り付いたユニフォームが見えていたから。

試合終了。
6人目のディフェンスに苦しんだとは言え、やはり一応は大勝した。
俺は、亡くなっても尚バスケに情熱をかける相手の4番に猛烈に感動していた。
ゲームが終われば相手の監督に挨拶に行き、いろいろアドバイスをもらうのが常だ。
その日の相手には監督がいなくて、比較的年長者の人が話をしてくれた。
全員で礼を言った後、俺は勇気を出して聞いてみた。
「あの・・・今日はキャプテンの方はどうされたんですか?」
もう俺はその時点で泣きそうになっていた。
「ああ~、4番?昨日仕事でミスっちゃってね~。今日はお客さんとこ行ってんだよ~」
・・・って、あれ?
他のメンバーも意味ありげに笑ってる。
最後に年長者の人が「これまた休日出勤の時にミスが多いんだよ。困ったヤツでw」と言い、
「お疲れさーん」ポンポンと俺の肩を叩いた。
それ以上は何も聞けなかった。
俺は、休んでも尚バスケに情熱をかける相手の4番に猛烈に感動しなおした。

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