小さな離れ

198 :改行の都合で1/2:2009/09/02(水) 03:18:11 ID:ZxXYzIRxO
>>197
誰も居ないのに話してたと指摘すると、
「今のはうらめしやって言わなかったから人間だわw」とか
「どうしてうらめしやって言わないのよ、ねぇ?」とよく同意を求められますw(´・ω・`)


も一つほんのりと…怖くないかも。

母の実家のお寺には、今は朽ちるに任せているが、
本堂の裏手のちょっと山に入った場所に、元茶室という小さな離れがあったらしい。
四畳だか六畳だかの小さなその部屋でくつろぐのが母の趣味だったそうだ。
「でもね、意外と人が訪れるのよねえ。もう、離れに行く石段なんて、草に隠れてほとんど見えないのにw」
教えてもらわなきゃ解らないような離れに来る(=道を知っている)ということは
檀家の人に違いない。
腐っても寺の子、おもてなししなくては!と
妙な理論を展開した母が家に帰ってお茶を用意して離れに戻ると、必ず人は居なくなっていたそうだ。

ある夏休み、読書家の母はいつものように離れで児童文学全集を読みふけっていた。
と、急に日が陰ったようになり、
いきなり気温が下がって寒くなったと思ったら、外から重たい足音が……
ふと気付くと、物も言わずに甲冑姿の男の人が離れに上がり込んできた。
その人は、まるで地獄の底から響くような声で
「うぅぅぅ……」とか「うぉぉぉ……」とか呟いていたという。
これはただ事ではないと感じた母は居住まいを正し、
「土足ですよ」
と開口一番に告げたそうだ。
途端にぴたりと声が止んだ。
いつものようにおもてなしするか、と立ち上がりかけた母。その時、つい
「暑くないですか」
と聞いてしまったところ、
甲冑姿の男はものすごく悲しそうな顔をして、何も言わずに立ち去っていったそうだ。
「あれってお盆前だったから、ご先祖様を迎える準備か何かだったのかしら。今思えば、悪いことしちゃったわね」
ママン、多分それ迎えじゃなくて、帰ってきた人だと思うよ('A`)

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