一世帯につき一戸の倉庫

533 :本当にあった怖い名無し:2009/08/16(日) 18:02:49 ID:N9HFoR3Q0
最近、オカルト板で「蠱毒」という言葉を知った者です。
以下は古い話ですが、もしかしたら、、、と何故か思い出した出来事です。
あるいは記憶違いかも知れませんし、全てが夢かもしれません。
ただ、話を面白くしようと意図的に誇張したりはしませんのでつまらないかもしれない事を始めに断わっておきます。

 今から約三十年前の小学二三年生の頃です。私(仮に名前をAとします)は父の勤める会社の社宅に住んでいまし
た。
その社宅には一世帯につき一戸の倉庫もあてがわれていました。今でも古い公営住宅などで見られる(と思います)、十数戸が横並びで、隣とはブロックで仕切られているだけの畳一畳分ぐらいの広さです。
もちろん電気などは付いていません。ドアは木で出来ていて、大人が体当たりすれば破れそうな代物です。正面から見て左に蝶番が二つ。
右側に把っ手があり、回して引いて開けるタイプです(どこにでもありますね)。
当時、子供でしたので高い所に登るのが好きでした。
その倉庫の屋根に登る方法としては、まず、どこかのドアを10cmほど開けます(ほとんど鍵はかかってなかったと記憶しています。ウチもかけてませんでした)。
そして左側から把っ手を足の裏で何度も蹴ります。
足の裏が痛くなってきた頃に蝶番をバットで何回かガンガン叩きます(私はこんな事はしませんよ、もっとスマートな方法を使っていましたので)。
ドアが少し傾き、ドア枠にうまく収まらなくなります。すなわち、完全に閉まらなくなります。
そうなると、次に正面から助走をつけて把っ手に飛び乗り、ドアの上辺に手をかけ、一旦体勢を安定させます。
一旦安定したらその状態の時に片手(右手)でドア枠あるいはその外側を押してドアを少し開けた状態にします。落ち着いて両手
でドアの上辺を握り直し、(体重を)把っ手からドアの上辺に移動します。
あとはバランスを取りながら立ち上がり、そこから屋根の上にのぼります。
そんな訳で十戸につき一戸ぐらいの割合でドアが完全に閉まらなくなっていました。そのうちの一つが、□□号室に住む三つ年上のB君(B家)の倉庫でした。

 B君(B家)の所はB父、B母、B姉、B君の四人家族。
B父に関しては一切記憶がありません。
もしかして母子家庭だったのでは?と思えるほどですが、社宅ですのでそんなはずはありません。
B母は他の社宅のおばさんと同じく、会えば挨拶するぐらい。
B姉は(私より)六つか七つ年上で、それ以外はよく覚えていない。
B君とは何度か遊んだ事はありますが、ただそれだけの関係です。
 ある日□□号室のB君(B家)の倉庫を見るとドアが完全に閉まっていました。試しに把っ手を
握り、開けてみようとしましたが鍵がかかっているのか開きませんでした。
別の日に見るとドアの把っ手がありませんでした。というより壊されていました。
私はてっきり、誰か(子供)が新しい方法を編み出そうとして、誤って蹴り壊したのだろうと思いました、“形あるものいつかは壊れる”と。
 そんな事があってからどのくらい期間が空いたのか本当に思い出せないが、私は日課の様に友達たちとどこかで遊び、暗くなってきたので家に帰った時の事でした。
家の前に着いた頃にはどっぷりと日が落ちていて、(時刻にすると七時半ぐらいと推測できます)
あぁ、こんなに遅くなってまた怒られるのか、と家に帰るのが躊躇われ近くの田んぼやら
商店の前、社宅の敷地内をあてもなく一人でうろうろしていました。

その時目に入ったのが、□□号室のB君(B家)の倉庫の前に佇む二三人のいずれも社宅に住む顔なじみのおばさん達でした。
何をしてるのだろう、その内別のおばさんが三人ほど小走りに合流してきて「キャー」とか「ウヮー」とか騒いでる。
私も近づくにつれて□□号室のドアが開いてるのが確認できる。私はおばさん達に気付かれないように後から近寄りドアの中を見ました。
そこには猫の死骸がありました。
一番肝心の部分ですが、申し訳無く一番記憶が飛んでしまってます。
「八つ裂き」という言葉通り肉片が散らばっているだけ(すなわち何匹か推測がつかない)の記憶もありますし、原型をとどめた胴体に何ヶ所も齧り取られた跡がある姿だったのか、、、
とにかく顔の半分ぐらいを齧られた(裂かれた?)猫の頭が転がっていたのは覚えています。
それを見なければ猫だったのかも分かりませんでした。
どれぐらい眺めていたのか、気が付くと周りの人達も十人ぐらいに増えていました。
結局私は死骸を見続けるのに飽きたのか、何事も無かったかの様に家に帰ったと思います。
その後誰かおばさんが母を呼びに来て見に行ったみたいです。

 私は親とあの光景の話をしませんでした。私があの光景を見た事が、親を不快にさせる気がしたからです。
「あれは一体何だったのだろうか?」と何度も自問自答しました。
書き忘れてましたが、その社宅ではペットを飼う事は規則で禁止されていました。
私は犬が欲しくて「家で飼うのがダメなら倉庫でかえばいいじゃないの」と親に言っていましたが了承されるはずもありませんでした。
同じようにB君(B家)も猫を飼いたかったのだが規則で禁止されている。それなら、と倉庫で飼い始めた。
他の住人にバレないようにドアを完全に締めた。
けど、いつの間にか把っ手が壊されていた為開けて餌を与える事が出来なくなった。
そのため中の猫達が腹を空かして共喰いを始めた。
あの光景はその成れの果てだったのでは、、、。
あるいは、B君(B家)に恨みをもつ変質者がいやがらせ目的であんな事をしたのか。
結局、私の頭の中で結論づけたことは「あれは、ぬいぐるみだったんだ」という事でした。
そんなアホな、と我ながら思いましたがそうでも思い込まないと気持ち悪くて仕方がなかったからでしょう。

その後、件の場所にいたおばさん達に話を聞いたこともありましたが
「さあね、おばさんにもよく分からないよ」
「Aくん、もうあの事は忘れなさい」
といった感じでした。さすがにB君(B家)には聞けませんでした。
そのうち私も忘れていきました。
ちなみにB君(B家)ですが当時、少し変わってるなぁ、と思える節もありました。
B君が中学生ぐらいの頃でしょうか、近くの田んぼでB母、B姉と三人で楽しそうにフリスビーをしている姿を、社宅の敷地内で同じくバトミントンをしている姿を覚えています。
B父を除く三人が非常に仲が良くなったのは、上述の件の前後ぐらいからだったような気もします。
私らの中学生だった頃は、母親と一緒に道を歩くのでさえ顔から火が吹出しそうだったのに、、、。

話は以上です。ここまで読んで下さった方、ありがとうございました。
ちなみに、>>533で書きました「蠱毒」についてですが、思い当たる人がいない訳では
無いのですが何となく書くのが憚られた為、書きませんでした。申し訳ありません。<(__)>

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