△△警察署の後藤

220 :本当にあった怖い名無し:2009/08/11(火) 07:06:38 ID:KaRbXVY80
なんだか思い出したのをまとめたらめちゃくちゃ長くなったw
夏休みってことで聞いてくれたら嬉しいです。

中学二年の頃の話。
風引いて学校休んで自分の部屋で寝てた。
そしたら壁一枚越し向こうのリビングからガラガラって窓が開く音が聞こえた。
「まさか泥棒?」と思って確かめようとしたんだけど、怖くて身体が動かない。
中二にもなって情けないと思うかもしれないけど、ずっと毛布にしがみついて身を縮めていた。
震えているうちに風邪のダルさも手伝ってかいつのまにやら寝ちゃってた。

やがて目が覚めたとき、なんだか無性に喉が乾いてた。
身を起こしてすぐ本能的にリビングまで行って、母親が用意してくれていたポカリを一気に飲み干す。
なんだか熱も引いたみたいで、頭にスッキリとした解放感。
「明日からは学校行けそうだな~」なんて思いながら、自分の部屋に戻ろうとしたそのとき。

ふと、窓が目に入った。
瞬間的に記憶が蘇った。窓が開く音が耳の奥底で反芻して、共鳴するように鳥肌が立った。
それでもおそるおそる窓まで近づき調べてみると、鍵はしっかりとかかっていた。そういえば部屋が荒らされた様子もない。
「なんだ、気のせいだったのか……」とほっと胸を撫で下ろして、今度こそ部屋に戻ろうと思った。
唐突に電話が鳴った。
ビクリと身体が震える。逃げ出したくなったが、それでも「もしかしたら母親からかもしれない」と思うとそれをとらずにはいられなかった。
「……はい、○○です」
「あーもしもし?」
母親ではなかった。
声は中年の男で、なんだかなれなれしかった。
「私、△△警察署の後藤という者ですけどね」
「……はい」
警察署。もちろん身に覚えなどなくて、一体何事かと眉をひそめた。
まさか家族が事故にでもあったのだろうか。
そんなことを考えていると、後藤という男は言った。
「お宅に監視カメラを仕掛けた奴を捕まえまして」

足元が一気に抜けたような感覚がした。
窓が開く音。警察。監視カメラ。
色んな言葉が頭の中でグチャグチャに混ざる。
後藤というその男はそれからしばらく何か話していたが、動揺してしまってよく覚えていない。
「……まあ、そういうことですので。これから指定する場所に来てほしいんですよ。お父さんに」
怖くてたまらなくて、咄嗟に答えた。
「すみません、ちょっとお父さん今いないので切ります!」
叩きつけるように受話器を置いた。再び静寂が戻ってくる。
どうしよう、どうしよう! テンパった頭で必死に考える。
出来すぎた話だけど、寝ている間に誰かが窓から侵入して監視カメラを仕掛けたのだとしたら辻褄が合う。
いやでも、捕まったのならばそれはいいことなのかもしれない。何より警察が言うことだ。
そんなことを考えて、とりあえず親に相談しようかと思ったが、両親は仕事中。絶対こちらからの電話には出ない。
そこで……

「……もしもし」
「はい、△△警察署です」
後藤という男が所属しているらしい警察署に電話をかけ直した。
もう一度ちゃんと話を聞こうと思った。
「すみません、○○といいます。先程後藤さんという人から電話をもらったんですけど……」
「はい、少々お待ちください」
「……」
保留状態に切り替わる。クラシック曲のオルゴールが、妙に怖かった。
しばらくして音楽が止み、声が受話器の向こうに戻ってきた。
「あー、お待たせしました」
「はい」
声は、後藤のそれではなかった。
「あの、後藤さんは……?」
困惑する俺に、声は告げた。


「うちには後藤という職員はいませんが」


おしまい。
結局後藤さんは一種の詐欺だったのかしら。それ以降電話も無いのでわかりません。
自分でもウソ臭い感じがするけどマジで実話なんですよ。

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