家に帰らなきゃ

755 :本当にあった怖い名無し:2009/03/01(日) 15:57:27 ID:pZ51gSR+O
これは会社の先輩から聞いた話。
うちの会社はわりと山のほうなんだ。
先輩がまだ新人だった頃、残業中に課長が急用で帰らないといけなくなった。
それで戸締まりを頼まれたらしいんだ。ただ問題があって、外注さんに納品に行っていたAさんがまだ帰ってない。
Aさんはセキュリティのカードを持ってなかったから先輩は仕方なく、帰りを待ってなくちゃ行けなくなった。
Aさんは真面目で仕事は出来るんだけど、慌て者。奥さんが病弱で看病の為に普段は残業をせず定時で帰る人だった。
19時を過ぎた頃、Aさんは携帯にも出ないので、先輩は当時事務所の奥にあった喫煙室でタバコをふかしてた。
携帯でメールをしながら夢中になっていると、急にバタンッと事務所のドアが閉まる音がした。
おっAさん帰ってきたかなと思うと、誰もいない、おかしいと思い、事務所の外を見回すが、人気がしない。
やれやれと席に戻ろうと振り返ると、何故かAさんが席に座ってる

先輩「ちょ、ちょっとおどかさいでくださいよ」
とAさんに、近づくとAはずぶ濡れで、帽子を深く被りうつむいたまま、小さな声で、「家に帰らなきゃ」と一言。

そうですね。と先輩が帰り支度を済まそうとロッカーから鞄を取り振り返るとAさんの姿がない。
なんだよ、挨拶もしないで一人だけと内心ふて腐れながら帰ろうと電気のスイッチに手を伸ばそうとした時、電話が。
流石に無視したかったが、そうもいかず電話に出た
「すみません、Aの妻ですが」と力のない女の人だった。
「あのAは会社でしょうか?先程ずぶ濡れで帰ってきて、仕事終わらせないとって言ってでていったんです。なんかいつもと様子がおかしくて」と
先輩はさっきの事をAさんの奥さんに話して電話を切ると今度は携帯がなった。
たびたびの足止めにいらつきながら電話にでると、それは先に帰った課長だった。
「あのな、Aがさっき事故に遭った、たまたま近くにいたから病院に付き添ったんだ、Aの家の連絡先わからないか?」と
先輩はそれを聞いて、頭が真っ白になった、そしてテンパりながらさっきの事を課長に話した。

「バカヤロー、そんな冗談言ってる場合じゃない、知らないのか」と怒鳴られ、慌てて社員名簿からAさんの連絡先を課長に伝えた。

先輩は頭がボーとなりながら、課長から言われるまま、会社に来るはずの部長と社長を待った。
ふとタイムカードとこに一枚カードが落ちている。
ふと拾いあげるとそれはAさんのものだった、ただその日の退社時間の欄に、刻印がある。
19:42

先輩は急に寒気がして、喫煙室に向かった。ふとAさんの机を見ると机の上にAさんが付けて行ったはずの名札が真ん中にポツンと置かれていた…………
それからうちの会社では土砂降りの雨の日に残業していると、19:42頃タイムカードを押す音がなるときがある。
もちろん周りにはだれもいないのだけど

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