共同生活

553 :本当にあった怖い名無し:2009/02/21(土) 22:11:35 ID:/eht/SZDO
あれはもう十年以上前、当時の会社がO市に支店を出すことになってそのスタッフに選ばれた。
当時は寮住まいだった。といってもマンションを会社が借りて俺と、K、Sとの三人暮らしの同僚との共同生活。
その時の入居予定のマンションがまだ施工が終わっておらず、代わりに会社が用意したのは潰れた食堂の2階の経営者が住んでいたであろう住居スペース。
正直、潰れて何年たったのか分からないくらいボロボロで、2階も壁中染みだらけ襖も破れてる有様。
部屋は二部屋あり、Sは階段側へ、俺とKは歳が近い事もあり窓際に寝泊まりしていた。
俺がとりあえず気になったのは窓の下の染みが子供の手を右手で引く女性に見えた事だった。ただ直ぐにオープンに向けて仕事は山ほどあり、帰り着いたら弁当食って寝るだけの日々が続いた。

オープンから半月ほどで仕事も落ち着き、俺達三人はやっと順番に休みが貰えるようになっていた。
その食堂のトイレが2階にしかなくトイレットペーパーの芯は何故か音がなるやつで、(エリーゼの為に)が流れるものだった。
2階にいると音が微かに聞こえる程度。
そんなある日、小雨の降る晩に次の日に休みが貰えた俺は深夜までプレステで遊んでた、隣にいるKは疲れてすでに眠っていた。
ふと腕時計を見ると午前1時40分ぐらいだったと思う、 一回から(エリーゼのために)のメロディーが聞こえてきた。 ただ普段聞こえるのより遥かに音がでかい。
Sが扉を開けたままのかと思い、襖を少し開けて確認するとSの姿が見て取れた。 Kは確かに俺の足元でいびきを書いている。
俺は一人で急にただならぬ恐怖を覚えた 。

泥棒かとも思ったが、何故か階段から下を見る気がしなかった。
怖くなり布団に入ろうとして、夏だった為に開けていた窓を閉める事にした。
そこで俺はある事に気が付いた、窓の下の親子連れに見えていた染みがない。
急に身体がガタガタ震え出して、俺は窓を閉めると直ぐに布団に潜りこんだ。 すると直ぐに誰かが階段を登る足音が聞こえ始めた。
それはゆっくりと階段を登り始める、俺はガタガタ震えながら布団の中で静かに息をころした。
2階に足跡が近づき、まさに階段側の襖の前で止まった時に俺は恐怖で気を失った。
眼が覚めるとKとSはもう仕事に出かけていた。 夢かと思い、窓の下を見ると確かに母親らしき染みの右手に手を引かれていた子供の形をした染みが、左手に変わっていた。
その後、次の日に会社に行くと俺は上司に急な転勤を告げられ五日後にはその部屋を出た。

半年が過ぎ、休みの日にその支店に顔を出すと支店のパートさんにある事を告げられた。

俺達が住んでいた食堂の奥さんと娘さんが店の前の道路を横切ろうとして、暴走族の車に跳ねられ死んだらしい。

ちなみに、Sは何事もなかったが、Kは三度程金縛りにあっていたらしい。
帰り道、まだ存在したその潰れた食堂を横目に俺はO市を後にした。
それ以来、俺は暫く金縛りに悩まされるようになった。

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