霊感ってうつるよね?

539 :1/3:2009/02/21(土) 16:31:27 ID:QswtpN8n0
霊感ってうつるよね?
学生時代、周りにかなりの霊感持ちがいたせいで、俺までも「視える」人になってしまった頃の話。

ある日、地元の友達とマンションの下にある公園でたむろってたんだ。
時間は23~0時の間頃と記憶している。
俺は一応「花の大学生」ではあった物の、学校の風習というか課題等のせいで、ろくにバイトもしなかったために金無し学生だった。
くだらない雑談を交えてダラダラとその日何をして遊ぶか、を話し合っていたと思う。
(そんな生活免許だけでなく、車まで持ってる大学生なんて、本当に凄いと思うよ。)

何気なしに俺は鉄棒に手を掛け、クルッと一回転(片足引っ掛けるヤツ。名称忘れたw)してみた。
その時、胸のポケットに入れてあった500円玉が落ちたんだ。
おっといけね、と地面に着地して、屈む形でそのコインを拾ったんだけど…

なんでだろうね、たまたま視線を前方に移したんだ。
その視線の先が、当時の俺の中で「絶対に見てはいけない場所」だった。
普段からその近くを通らなくてはいけない時も、目だけは背けてた。
友人とたむろっていた時も、「その場所」だけは視界に入れない様にしていたのに。

遂に、見てしまった。
その場所に、いる。
白い服を着た女の人。

「それ」が俺の存在に気付いたのかは分からないが、
マンションの裏へ続く道へすぅっ、と消えて行った。
「すぅっ」と書いたのはその表現の如く、「自分の脚で歩いて移動した」様な動きではなく、
ビニール袋が風に吹かれて飛んだ様な動きだったからだ。

「自分が[向こう]に気付いても、それを[向こう]には絶対に気取られるな」
と霊感持ちの友人から教わっていた俺は、なるべく慌てない様に、その場から移動した。

その時一緒にいた友人は誰も俺が見た物を見ていなく、とても歯痒い思いだった。
場所が場所だけに、俺が先程の話をした時に皆からかう事も無く、黙ってしまった。

その場所とは、更に遡る事数年。俺が中学生の頃の事。
とある日曜日、夕方の19時頃だったか…細かい時間は忘れた。
まだ外は明るかったのは覚えている。
何かね、外が騒がしいんだ。
近所の子供が騒いでるのはいつもなんだが、それに大人の声も混じってる。
終いには救急車のサイレンの音が、すぐ下で止まる。
これはもうただ事じゃないと。
外に出ると、近所の幼なじみもいて、恐らく俺も同じ目をしていたであろう、好奇心に満ちた目をして、この騒ぎの元の情報を探っていた。
人の流れに乗って行くと、あっけない程に騒ぎの元に辿り着けた。

真っ赤な水溜まりの中に、横たわった女の人。
飛び降り自殺だった。

鉄骨剥き出しの階段に一度衝突してから地面に落ちたらしく、血の量が物凄かった。
初めて見る遺体は、普段見慣れている筈の人間の形なのだが、明らかに違う物体と化していた。

どうやらこのマンションの住人ではなかったらしい。
次の日、学校ではこの話で持ち切りだった。
どんな悲劇も、子供の前ではその好奇心を満たす為の「ネタ」になってしまうよね、とても不謹慎かつ悲しい事だけれども。

だが、悲劇はそれでは終わらなかったんだ。
またしても尋常ではない騒ぎ、下で止まるサイレンの音。

集まった人達の視線の先に、あらぬ方向に曲がった手足を持った「人の形をした物」が横たわっていた。

先程書いた出来事の、翌週の日曜日…
同じ曜日、同じ時間、同じ場所…

亡き母を追って、娘さんの後追いだった。
聞いた話では、俺とそんなに歳の変わらない方だったらしい。

詳細を聞いたのは後日の学校でだったが、その時何とも言い様のない気分になり、俺は泣いた。


この時の出来事は俺の心に相当衝撃を与えたらしく、今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。
真っ赤な水溜まり…
あらぬ方向へ曲がった手足…

そして、コンクリートの上に広がった赤い液体を、一人デッキブラシで掃除する管理人さん…

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