絵がある廊下

144 :1:2008/08/22(金) 10:59:05 ID:uhX9bCD90
ちと思い出したんで書いてみる。微妙に違うかもしれんが。

小学校の自然学校で、ある島の宿泊施設に泊まったことがある。
当時通っていた学校は少子化で他校と統合寸前のところだったから、
クラスも当然一つしかなくって先生の見張りは他と比べればずいぶん甘いものだった。
一日目の行程が終わり、風呂に入って各自時間までに部屋に戻りなさいってなって、
水しぶきあげ会場となった浴場が嫌だった僕は早めに一人で戻ることにしたんだ。

戻る途中の長い廊下で、西洋によくある陰陽の表現を使った果物の絵が飾られてるのを見つけた。
来るときはおしゃべりに夢中で気づかなかったが、
元収容施設でところどころコンクリートがむき出しといった外観の、
どこか無機質で閉塞感のあったこの場所にそんな絵があったのは
はっきりいってすごくミスマッチで不気味だったのを覚えている。

なぜかその絵に恐怖心を感じた自分は
その絵がある廊下だけ、全力で走って部屋に戻っていった。

自然学校自体は滞りなく、順調に進んだ。自分も大いに楽しんでた。
でも毎夜、その絵の前を一人で通る瞬間だけは嫌な気分が拭えなかった。
風呂で暴れるのが嫌だから一緒に帰りたいというのも
なんだか情けなくて友達にいえなかった。

最終日の晩、同じように絵の廊下をやりすごして階段の前に来た時、何の気なしに後ろを振り返った。
20mくらい先だったかな?
小学生だったから距離感は微妙だけど、
少し離れたところに誰かの白い、何もかも白い両足だけが立っていた。
多分同じか少し下くらいの、子供の足だった。古そうな靴を履いていたのを覚えてる。
一時マジマジと見ていたけど、急に見ちゃいけなかった、と思い立って
ダッシュしようと思って振り返ったら
今度は目の前に黒髪のパッツンの女の子の上半身だけが浮いていた。

自分でもわけのわからない変な声を上げて、
後ずさりして元来た風呂までの道をがむしゃらに走った。

その子の表情は特になかったように思う。
あんまり思い出せないし思い出したくないんだけど、ただこっちを見ていただけみたいだった。
すごい形相で風呂場に戻ってきた僕を友達は不審がったが、
忘れ物があると言ってやりすごし友達と一緒になって帰った。

翌日、その施設を去る前に
どうせまたくることもないだろうと思い、
トイレ休憩の合間に隙を見て抜け出して事務室まで言って聞いてみたんだ。
やっぱりあの廊下で出るらしかった。細かい理由はわかってないらしいが。
絵の裏には案の定お札が張られているそうだが、その霊はまるで意にも介さなかったらしい。

さらに奇妙なのが、
その子の霊は以前からもパッと現れて驚かせているそうだが、
そのほかには特に何も被害を及ぼさないということだった。
そのときは恐怖心しか沸いてこなかったが、
今となってはその子が何が心残りで急に現れているのか、気になって仕方がない。

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