母はげらげら笑って言った

499 :本当にあった怖い名無し:2008/07/01(火) 23:12:58 ID:nCKYimrs0
ちょっと怖かった話。

もう10数年も前だろうか、当時はよくやっていたTVの心霊特番を母と観ていた。
心霊写真のコーナーで、雑木林を撮った写真を大きく引き伸ばし、白い円で囲ったものがTVに大写しに。
鈍い私には、円の中には枝や葉がつくる陰影しか見いだせない。
まあ顔と言えば顔に見えなくもないが、円形のものが左右に二つ並んで、その下にもう一個円があれば、
見ようと思えば目と口に見えるものだ。まあそんな程度のも写真。
いくらなんでもこれはこじつけだろうと観客の女性のわざとらしい悲鳴に白けていると、母はげらげら笑って言った。

ばかみたい、こんなただの影に〇印なんかつけちゃって。

「観えた」話をよくきかせてくれる母の口からそんな言葉を聞くと、やっぱりこれは心霊写真なんかじゃないんだなと少しがっかりする。
だが、浮き浮きと続ける母の言葉に私は固まることになった。

そんなところには影しかないけど、ほら、木の根元。人の顔がはっきり、見えてるでしょ。こっちこっち。

こっちと言って母が指さすあたりには、顔に見えなくもないものなんてこれっぽっちもない。
私があんまり怪訝な顔をしていたのだろう、母は驚いたように言った。

え? なんで見えないの? こんなにはっきり、人の顔が映ってるでしょ?

…おかあさん、どう頑張ってもそこには人の顔に見える陰影や模様はございません。

そんな母は、京都のある寺の夜間拝観の帰り道、境内がうるさくてかなわなかったと言った母だ。
私には薄気味悪いぐらいに静かな寺であったことを申し添えておく。

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