表に出れないんでね

223 :本当にあった怖い名無し:2008/06/21(土) 20:49:21 ID:WrOkXYnk0
ピザ屋でバイトしてた頃の話。
とあるマンション(新築、おそらくワンルーム)に配達に行った。新規の客だった。
オートロックだったので入り口で部屋番号を押すと、ほどなく「はい」と若い女性の声がした。
「お待たせしました、ピザ○○です」
「あの~すいません、今ね、ちょっと顔を殴られてケガしてて表に出れないんでね、
 ドアの前にお金置いとくんでそこにピザ置いといてくれませんか?」
少し変わった申し出だったので一瞬戸惑ったが
「あ、は…はい…わかりました」
と答えてマンション内へ。
見せられないぐらいひどいケガなんだろうか??
まぁ事情は知らんが殴られたことは別に言わなくても…
などと思いつつエレベーターで3階に上がる。
その部屋は廊下の突き当たりにあった。
ドアの前には剥き出しの2060円。
ゆっくりと金を拾ってからピザをそこに置き、廊下を戻る。でもやはり気になる。
エレベーターは3階のままだったが待ってるフリをしながら横目でその部屋を窺っていた。
顔を見てみたい。しかしきっとむこうも覗き窓からこっちを見てるはず。
なかなかドアは開かない。10メートルほどのあいだに漂う緊張感。
こっちが行くまで出て来ないつもりだな…。
諦めてエレベーターに乗り込もうとしたそのとき、音もなくドアが開いた。
わずかに開いたドアの隙間。
その下のほうから生白い手が一本にゅ~っと現れると
不器用にピザの箱を掴み、それを縦にしてドアの隙間に逃げるように消えた。
天才バカボンに、手だけしか見せない一家の話があったのを思い出した。

前の話へ

次の話へ