ごんごん爺

897 :本当にあった怖い名無し:2008/06/07(土) 03:33:33 ID:UkU9z4D40
ふと思い出したので投下。長文失礼

うちの地元には「ごんごん爺」という昔話が伝わっている。
お寺の夕刻の鐘が鳴ってもまだ遊んでいる子供の所には
山からごんごん爺が降りてきて、攫っていくというもの。
現れる時は「ごーんごーんが聞こえんかったかあ」と声をかける。
だからごんごん爺。
まあよくある戒め系の話だ。

さて私が小学三年生の頃、ちょっとした不審者騒ぎが起こった。
同じ学校の同学年の女の子が、ピアノ教室の帰りに浮浪者のような老人から
声をかけられ、腕を掴まれたという事件が皮切り。
似たような事が二、三件続き、学校で注意文のプリントが配られたり
通学路にPTAと警察のパトロールが緊急配備されたりと、
普段とことん平和な田舎町なだけに「えらい騒ぎだ」と思った覚えがある。
不謹慎ながら、うちのクラスでは女の子に声をかけた老人はごんごん爺だ、
というのが定説になっていた。

当時、私は友人三人と、ほとんど丘に近いような小さな山の中に秘密基地を作り、
そこを拠点にセーラームーンごっこだのをして遊んでいた。
その日の放課後も例によって四人で集まり、とりとめもなくダベっていたが、
四時頃だったろうか、友人のうちの一人が
「今日は早めに帰らないと怒られる」と言い出した。
いつもは五時に、近くの公園のスピーカーから「夕焼けこやけ」が鳴ってから
帰ることになっていたので、何かあるの?と聞いた。

友人は少し声を潜めて答えた。
「1組の女子がごんごん爺に声かけられた事件あったろ。あれ、この山の道なんよ」
えっと驚く一同。
確かにこの山には、舗装もされていない小道が通っており、
住宅地から国道への近道となっている。
「じゃけえ、本当はこの山に入ったらいかんってお母さんに言われとるけど、
校庭で遊ぶって言って来たんよ。遅くなったらバレる」
なるほど事情は分かったが、そういう事はもう少し早く話してほしかった。
私達は一斉に不安になり、今日はもう解散、そしてしばらくは校庭で遊ぼう
という事を決め、皆で山を下り始めた。

「ごんごん爺が出た」という山道を、一列になって(人がすれ違えないほど幅が狭い)
怖々進んでいたその時。
突然、秘密基地の方から声が響いた。
「けえーーー…」
という、丁度さおだけ屋の「さおだけー」の最後の部分のような声。
恐らく成人男性のものだろう。
もちろん秘密基地のある場所にはさおだけ屋の車など入れないし、
山向こうからの声にしては近すぎる。拡声機を通している感じもしなかった。
更にもう一度、
「エエーーーッ!」
と雄叫びのような声が響いた時、私達は完全に恐慌状態に陥った。

それからどうやって山を降りてきたのか。
全速力で走ったのに呼吸をするのを忘れていて、死にそうになったのは覚えている。
どうにか家に辿り着いたものの、全員パニック状態のままだったので、
玄関で号泣、それぞれの家で大騒ぎの挙句、友人宅に集められ、
生まれて初めて警察のご厄介になってしまった。(証言を取られた)
その後、親、警察、教師から慰められるもしっかり説教もくらい、
山の秘密基地は放棄することとなった。

間もなく、不審者の噂は未解決のまま立ち消えとなり、
秘密基地のあった山は立ち入り禁止にされ、
さらに数年後には新しい道路が出来て半分以上切り崩されてしまった。
あの山の道を近道として利用していた子供は思いのほか多かったらしく、
何度か「どっかの子が不審者に声かけられたからって通れなくなったんだって、誰だよ」
と耳に痛い愚痴を聞かされたが(事件については四人ともあまり口外しないようにしていた)
当然ながら私はその後何年も、あの山に近付く事すらなかった。


以上です。特にオチも何もありませんが、小学校時代の一番怖い思い出。


901 :本当にあった怖い名無し:2008/06/07(土) 03:47:10 ID:UkU9z4D40
書き忘れてたが、これ普通に考えたら
放浪中のちょっと病的なおじさんがうちの地元に一時滞在して、
しばらくしてまた去って行ったってのが一番しっくりくるな。

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