妄想

8 :本当にあった怖い名無し:2008/04/29(火) 00:55:04 ID:GQ84jxYI0

怖いと言うより、自分が驚いた体験だ。
十年程前、東北の日本海側の町に出張に行った。
海に面した町で、旧赤線(公認売春宿)だった古い旅館に泊まった。
旅館の裏は県道、その直ぐ脇は防波堤そして海。
晩秋の荒波の音が聞こえる。
自分は海に面した2階の部屋に泊まった。
壁を挟んで隣の部屋には出張に同行した小柄な美人女性社員Mさん。
仕事を終え、疲れた私とMさんはそれぞれの部屋で晩飯前に仮眠を取った。
床に入ると自分はMさんの事を考え、彼女の身体を弄ぶ妄想を抱いた。
唇から首、胸、局部へと。
やがて眠り、晩飯の時間前に目覚め入浴し、座敷の食堂へ晩飯を取りに行った。
Mさんが先に来ていて待っていた。
食事を始め暫くするとMさんが私を見つめ、
「A(私)さん、笑わないで聞いてもらえますか・・・」
「何?どうかしたの」
「私の泊まっている部屋の事です。私が眠っていると、金縛りと言うんですか、動けなくなって・・・」
「疲れたんじゃない?」
「それだけで無く、何者かが私の顔から首、胸と触るんですよ。
姿は見えないんですけど。
気配は感じるんです。
気持ち悪くて・・・」
その何者かの行動は、自分の妄想と一致する。合理性は無いが焦る。
「出たんだ」と、取って付けた様に私。
「金縛りが解けて、起きて部屋の入り口の部屋名を見たんです。
女の人の名前になっているんです。
変だと思いませんか?」
私は自分の部屋の名前を思い出した。
「はまなす」だった。
田舎旅館には良くありそうな部屋名だ。
彼女は赤線の絡みで何かが出たのだと思っていたが、自分は妄想を読まれたのではないかと多少の罪悪感を感じつつ、食事を終えると自分の部屋に戻り床に就いた。

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