存在しないはずの記憶

茶柱◆cSsNy1w6Kk@特選怖い話:2022/06/23 22:19 ID:6FdEomB.

私は小さい頃、母に「一緒に死のう」と言われたことがあります。
私の記憶では、昔の母は何かとエキセントリックで情緒不安定な人でしたから、当時はさほど違和感もありませんでした。
幼いので死ぬということの恐ろしさもよく分かっていませんでした。
母が何故心中しようと言ったのかは今でも分かりません。いつの間にかその話も無かったことにされ、母も全くそんな素振りを見せなくなっていました。
でも確かに私の記憶の中には、練炭自殺や入水自殺の方法について嬉々として話す母の姿がくっきりと残って離れません。

ここからが問題で、中学の頃に一度だけ母にそのことを尋ねたのですが、記憶に無いと言われてしまったのです。
しつこく問い詰め口論にまでなりかけたのですが、母は頑なに否定し嘘をついているようにも見えませんでした。
その頃の母はもう随分落ち着いて、穏やかな人になっていました。

今ではあの記憶は悪い夢か何かだったのではないかと思うようになりました。
でも確かに、心中を提案する母の姿は鮮烈に記憶に焼き付いているのですが。
もう訳がわかりません。やっぱり母は嘘をついているのでしょうか?
特に落ちはありませんが、これで終わりです。

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