真っ赤な塊

65 :1:2008/03/06(木) 16:52:28 ID:zZYBioV50

私と友人におこった話です。
去年の春、3月か4月かは忘れてしまいましたが、友人と散歩をしていたのです。
風が強くて、ものすごい桜吹雪でした。
すごいなぁ、と思いながら特に会話もせず、友人と2人でふらふら歩いてました。
あ、ちなみに2人とも男です。
文章を書くと、一人称が私になってしまうのです。
そのうち、友人が足をとめました。
私は数メートル歩いてからそれに気付いて、後を振り返りました。
すると、友人は真っ直ぐに前を見ているのです。
私を見ているわけでもなく、目を見開いて、無表情に前の方を見ていました。
友人の視線を追って見ると、ずっと向こうに真っ赤な塊が見えました。
そこは桜並木がかなり長くアーチを作っているようなところなのですが、その赤い塊は、私たちから数十メートル先に見えました。
私はそれほど目が悪いわけではないのですが、その時は距離があったせいで、その赤い塊の正確な形がよくわかりませんでした。
大きさは、人がうずくまっている位だったと思います。

あれはなんなのだろう、とぼんやり考えていました。
今思うと、桜に気をとられて意識がはっきりしていなかったのかもしれません。
ただぼんやり突っ立って、その赤い塊を見続けていました。
見続けていると、その赤い塊が動いていることに気付きました。
あれ、何でさっきまでは動いてるのに気付かなかったのだろう?
などと考えていると、いきなり手首を捕まれました。
友人に手首を掴まれている、というのを認識する前に、友人は全力で、もと来た道を走って戻り始めました。
その時私はまだぼうっとしたままだったので、意味がわからず、何故こいつはいきなり走り始めたのだろうと、つられて走りながら考えていました。
桜並木を抜ける頃には、走ることに一生懸命になっていたので、赤い塊のことも頭から消えていました。

桜並木を抜けたところで、二人でぜいぜいいっていると、友人がいきなり顔をあげて、すごい剣幕で言ってきました。
「おめぇ、あほか!」(岡山弁です)
私は何故そんなことを言われるのかわからず、きょとんとしていました。
友人はしゃがみこんで、涙をぼろぼろ流しはじめました。
わたしは、その友人が泣いているところを見るのがはじめてだったので、物凄く驚きました。
友人はしきりに、良かった良かったといっています。私には何が何やらさっぱりわかりませんでした。
その後、友人にあれはどういうことかを聞いてみたりもするのですが、きちんと教えてはくれません。
ただ、あの桜並木にはもう近づいてはいけない、と言われました。
あの赤い物は結局何だったのかもわからずじまいです。

長くなっちゃいましたがほんのりでもないですね。

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