イルカと一緒に泳ごうツアー

912 :1:2008/03/01(土) 10:38:54 ID:bvCxu2YR0

友人の体験。

数年前、友人は「イルカと一緒に泳ごうツアー」に1人で参加した。
格安ツアーの為、参加者はそのツアーが開催される島に現地集合。
現地集合と言っても、その島へ向かう船便が少ないため、みんな同じ船に乗り合わせることになる。
友人は一番安い「ざこ寝エリア」のチケットで夕刻に乗船。
船内で1泊し、翌朝、島に着いた。
そして現地で参加者と会い、楽しいツアーを満喫。

そのなかで、やはり1人で参加している女性と友達になった。
その女性が言うには島に来る船の中で、ちょっと気持ちの悪い思いをしたとのこと。

その女性は島に渡る時、料金を少し上乗せして「個室」を選んだ。
「個室」と言っても、二段ベットが入った二人用の部屋。
一人で乗船のため、知らない人と相部屋になるわけだが、
二段ベットにはそれぞれカーテンが取り付けてあり、それを引けばベットが個室のようになる。
そして女性は女性と相部屋で、異性と一緒になることはないとのこと。

当日、同室の相手がどんな人なのか、少し緊張しながら指定された個室に向かった。

ドアを開けると、二段ベットの上段のカーテンが引かれていた。
どうやら相手は先に来て、ベットで休んでいるようだ。
彼女は、相手が起きてきたら挨拶しなくては、と思いながら、
あまり音を立てるのも失礼かと、ベットのハシゴの下に置いてある相手の靴をぼんやり眺めながら過ごした。
少しくたびれた黒いハイカットのスニーカー。

しかし、いくら待っても相手が起きてくる気配がない。
仕方なく部屋を出て、食事を済ませ再び部屋に戻っても、スニーカーはそのままの形で置かれている。
その日、彼女は相手の姿を見ることもなく、眠りについた。

翌朝、船は島に着いた。
彼女は朝になっても、姿を見せない相手に少し違和感を感じた。
夕方から乗船して夜中まで寝入ってしまうことはあるかもしれないが、朝になっても起きてこないなんて。
しかし、カーテンのなかを覗くのは怖かったし、ためらわれた。
「船の関係者に一言状況を伝えてから降りた方がいいかも」
彼女は下船の準備をし、荷物をかかえ廊下に出た。
ドアがパタリと音をたてて閉じた。

その時、部屋の中でベットのカーテンが開く音がした。
「シャッ」
その音を聞いて、彼女は急に怖くなり、後ろを確かめることもせず船を降りた。

私としては、ここまででも「ほんのり怖い」んだが、まだちょっと話は続く。

ツアーも無事に終わり再び船に乗って帰る日。
行きと違い、ツアーで仲良くなった人々と談笑し楽しい船旅となった。
その女性も、「ざこ寝エリア」で帰る事になった。
そして、みんなでデッキを散歩しているとき、彼女が言った。
「あ、あの靴だ」
見ると、くたびれた黒いスニーカーが揃えて置いてあった。

「その相手も、この船に乗ってるんだ!」とみんな少し興奮した。
船便が少ない島のことだったので、行きの船で一緒だった人と帰り便が一緒になることに何の不思議もない。
「どんな人か見てみたい」
と、スニーカーから少し離れたベンチに座り、それを取りに来る人を待った。
しかし、やはりと言うべきか、誰も現れない。

友人達は待ちくたびれて、その靴を船の中の案内所に届けることにした。
すぐに船の中に「スニーカーの落とし物がありました、心当たりのある方は…」
とアナウンスが入った。
友人達は案内所から少し離れたところから様子を見ていたが、誰も現れない。

しびれを切らした友人達は案内所に行き、あのスニーカーに心当たりがあることを告げた。
行きの船の便名と、部屋番号を教えた。
案内所の人は、それを元にスニーカーの持ち主を割り出した。
「○○○○様、落とし物が届いております。至急、案内所に…」

アナウンスが告げたのは、男性の名前だった。
結局、その男性は乗船したことは確認されたが、案内所には現れなかった。

結局、姿を見ることは、かなわなかったわけだけど。

「異性と同部屋になることはない」という事だったのにもかかわらず、相手が男性だったのは、
「その女性の名前が、男性でも通用する名前だったから間違えたんじゃないかなぁ?」とか。
しっかりしてくれ、船会社。

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