せり出し装置

352 :本当にあった怖い名無し:2008/02/12(火) 04:55:45 ID:tmGskF5h0

1958年4月1日午後6時半頃、旧宝塚劇場で行われていた花組4月公演
「宝塚春のおどり・花の中の子供たち」の公演中、月組の香月弘美が死亡した。
 せり出し装置───舞台下から出てきたり、逆に舞台下に消えてゆく仕掛け───のシャフトに
彼女が着ていた衣装の裾がはさまれ、スカートを広げるために衣装に仕込まれていた薄い鋼のベルトによって
胴体を切断されたのだ。

 ご存じの方も多いとは思うが、せり出し装置の動く速度は、それほど速いものではない。
 その、じわじわとしたスピードで死につつある恐怖は、尋常の物ではなかったであろう。
 鮮血に染まりながらゆっくりと胴体が切断されてゆく様を、
ただ黙って見ていることしかできなかった相手役・松嶋三那子はショックで数日間失踪したという。
 皮肉なことにこの日の香月は「代役」であった。風邪をこじらせた同期生(日夏友里)に休演を勧め、
その代わりを自ら買って出ていたのだ。

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