ばんが来た

161本当にあった怖い名無し2021/07/27(火) 16:36:54.65ID:BDUJm29S0
自分にあった(?)今でもよく分からん話。

僕が小学生の頃の話。確か中学上がる準備をする前の年だから、小学5年だったと思う。
当時の僕は奄美大島に住んでいた。
元々は鹿児島県本土に住んでいたそうだけど、母親の事情で僕が小学校に上がる前ぐらいに母親の実家がある奄美大島に引っ越してきたらしい。
詳しい事情とか聞いたことないし、本題ともたぶん関係ないからその辺は省略する。
大島では母の実家の祖父母の家に、祖父母と母親、父親、僕、3つ下の妹、そして叔父さんと叔母さん、2個年上の従姉っていう結構な大所帯で暮らしてた。
祖父母も孫べったりで、今考えると甘やかしすぎだろってぐらいに可愛がってくれて、
叔父さんと叔母さんも、共働きで帰りの遅くなる両親の代わりに面倒を見て可愛がってもらった。
従姉の方はというと、僕が小学校低学年ぐらいの時は妹ばっかり可愛がってて、「僕も構ってほしい!」とか思ってたのか、
気を引こうとして悪戯を仕掛けてたらしく、しょっちゅう喧嘩してた覚えがある。

今となっては詳しい場所は思い出せないし分からないけど、祖父母の家からそこまで離れていないところに綺麗な海岸があった。
なぜかその海岸で泳いだ記憶はないんだけど、バーベキューとか花火で遊んだ記憶はある。
で、それがあった日もその海岸で遊んでたと思う。
その頃になると従姉も僕の方に気を配ってくれるようになってて、僕の方も悪戯はしなくなってたんじゃないかな。
その頃に喧嘩した記憶がないからたぶんそう。2人でまだ危なっかしかった妹の面倒を見ていたのは覚えてる。
その日もバーベキューをしたり、暗くなってから花火をしたりして遊んでたと思う。で、
その頃は祖父母が「自分らはいつ死んでもおかしくない歳だから、せっかくだから記録を残したい」って言ってて、何かあるごとに写真を撮ってた。
その日も夕方ぐらいに集合写真を何枚か撮った。

当時はゲーム機なんて気の利いたものは持っておらず、遊びといえば友達と遊びに行くか、家で祖父母や従姉、妹と遊ぶぐらいしかやることがなかった。
それで、海岸でバーベキューして写真撮ってからたぶん1ヶ月経ってないかぐらいのその日も何気なく写真とか見ながら祖父母や従姉と一緒に「こんなこともあったなー」みたいなことを喋ってた。
海岸で撮った写真も中にあったはず。
祖父母と一緒に写真を見ながら思い出話をしてたら、突然妹が「ばっば!」って大声を出した。
妹は祖母のことは「おばあちゃん」って呼んでたから、「ばっばって何?」って思ったのを今でもハッキリ思い出せる。
写真を手にしたまま「ばっば!ばっば!」って今にも泣きそうな顔をしながら声を上げる妹を落ち着かせようとして、従姉が何か声をかけてた。
何か怖くなった僕は祖母にしがみついてた。
妹はずっと「ばっば!」って言ってて、従姉に写真を見せようとしてたと思う。
従姉も妹が持ってた写真を見て、すぐに顔が強張り、「この女の人誰?」みたいなこと言ってた。
従姉が祖母に写真を見せると、祖母の顔が何というか、おぞましい化け物でも見たような顔になって、
一緒に写真を覗き込もうとした祖父と僕に、今まで見せたことのないような怖い形相で「見んな!」って叫んだ。
いつもは怒ることを知らないんじゃないか?ってぐらい温厚だった祖母がいきなり怒声を上げたもんだから、
祖父と僕も固まって、叔父さんと叔母さんも「何事?」って顔を出してきた。
祖母は「○○(叔父さん)は来るな!」って怒鳴って、叔母さんに「△△(知らない名前。というか覚えてない)を呼んで。あと、悪いけど一緒に探して」みたいなことを言って、
祖父と叔父さんと僕に「できるだけ写真は見るな」って言ってから部屋から追い出した。

それからは何か大騒ぎで、知らないおばさんやおばあさんが家に集まってきて、
両親も帰ってきてから、母親が「お前も探して」って言われて何か作業に巻き込まれてた。
けど、母親はなんか「あぁ、そっか」みたいな顔してたのを覚えてる。
追い出された祖父、叔父さん、父親はなんか酒盛りを始めて、妹は声を出して疲れたのかすぐ寝ちゃって、僕は従姉に「何があったの?」って聞いた。
そしたら、従姉が「なんかね、ほら、先月撮ったじゃん、写真。たぶんその写真だと思うけど、お父さん(僕からしたら叔父さん)の横に知らない女の人が立ってた」って。
先月っていつ写真撮ったっけ?って思い出そうとして、あの海岸での集合写真だってすぐ分かって。
その時祖父母、僕家族、叔父さん一家以外誰もいなかったはずだから、すぐに「心霊写真か!」って分かった。
「マジで?見たかったなぁ」って言ったら、「女の人、裸だったよ?スケベ」って従姉に怒られた。
祖母達の作業は夜通しあったらしくて、夜中にトイレで目が覚めた時もまだ話し声が続いてた。
話してる内容は聞こえてたはずなんだけど、寝ぼけてたこともあってかほとんど覚えてないけど、
たぶん祖母でも叔母さんでも母親でもない声で「ばんが来た。ばんが来た」って言ってたのだけは妙に覚えてる。

翌日、当時心霊系が周囲でブームだったこともあって、
本物の心霊写真を見たことを友達に自慢してやろうって思って従姉が見た心霊写真を見たくて祖母に「見せて」言ったら、
祖母が本気で泣きそうな顔で「そんなこと言わんで」って言ったもんだから、それ以降写真を見せてなんて言えなくなってしまった。

で、それからいつの間にか県本土に引っ越すことになった。
ちょうど僕が中学校に上がる準備が始まるかな?ってぐらいのタイミング。
叔父さん一家も、場所は少し離れてるけど一緒に県本土に引っ越すことになった。
何で急に?って思ったけど、母親も叔母さんも「大丈夫だからね」しか言ってくれなかった。
県本土に渡る日、見送りに来てくれた祖母が僕と妹と従姉に「大丈夫だからね。ばあちゃんはずっと味方だからね。守ってあげるからね」って泣きながら言ってたのを忘れられない。

県本土に渡ってからいつの間にか生活にも順応して、こっちでの生活が当たり前になった。
事情を知ってそうな母親と叔母さんに何度尋ねても絶対に教えてくれないし、そもそも10年以上経った今日まで何も起きてないから、何があったのか全く分からない。
あの写真を見つけた妹も、その時の話をすると「みんなで怖がらせに来てるんでしょ、も~」みたいな感じで、覚えてないというか信じてない様子だった。
ただ、「島にだけは絶対に近付くな。来るとしても女だけにしろ」って言われてて、
5年前に祖父が亡くなった時も、葬式には母親と妹、叔母さんと従姉だけで行って、僕と父親と叔父さんは家で留守番だった。

この話を思い出したのは、つい先日大島にいる祖母と電話して、「寂しくない?コロナが収まったら顔出そうか?」って話をしたら、
「ばあちゃんが絶対に守ってあげるからね。だから心配いらないよ」って言われたのがきっかけ。
今でも祖母のことは大好きだけど、何というか、その時の祖母は話が噛み合ってるようで噛み合ってないような薄気味悪さを感じて、適当に話を合わせて電話を切った。
あと、奄美大島が世界遺産登録されたってのも話を思い出したきっかけの一つ。
 
今でも何が起きたのかは分からないけど、たぶん一生知らなくていいことというか、知っちゃけないことだと思う。
興味がないって言われると嘘だけど。
ただ、たぶん僕は死ぬまで大島には近付かないと思う。根拠はないけど、何となくそんな気がしてる。

終わりです。

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