邪悪な男

840 :邪悪な男:2008/01/29(火) 22:39:10 ID:T31uUkMx0
会社にこんな男がいたんだ。
やたらと、文句ばかりを言って、揚げ足取りをする。
特に自分より立場の弱い人間に対して。
それに、自分の事を非難されるとヒステリックになって怒るから、
上の人間も腫れ物を扱うような感じで接していた。
能力はそこそこあったから、仕事は回していた感じなのだけれど、
そこそこの能力なのに自分は特別優れた人間だと思い込んでる。
周囲はその人がヒステリックになると面倒だからって
「出来る人だ」みたいに褒めてたんだ。その方が無難だから。
でも、事実を知ってる人達からは冷笑されてた。

で、その人の下に若者をつけると、やめてしまうはノイローゼっぽくなるはで
会社側としてもどうにもこうにも困ってしまってた。
ある程度の年齢になったら、後続を育てたり、組織の管理をしたりってことが
求められるし、そうしないと会社としても利益があがらないから困ってしまう。
でも、彼は自分は特別に能力がある優秀な人間だから
自分は、ずっと同じ仕事でやっていくと考えてる。
ポイントは
自分は特別な優れた人間だ。周囲に迎合する事はない。
世の中は敵で自分は孤独に世間と闘い続ける人間だ。
って考えてることなんだよね。
自分に欠点があったとしても、周囲が悪いって言う。
部下が潰れてしまっても、そんな出来ない部下を持った自分が不幸だ。
あんな出来ない奴が悪いって主張する。
自分の欠点を周囲に転嫁してるのさ。
その欠点が人間性の部分だからたちが悪い。

だから、彼のためを思って意見を言ったり、
欠点を直した方が良いよってこともいっさい聞かない。
彼は、周囲の親切も、実は裏があって、自分を潰そうとしてるって
思い込んでるらしい。

で、そんな彼が結婚する事になった。
彼の本性を知ってる者達は驚いたのなんの。
よくあんな男を選ぶ女がいるな
ま、口がうまいから騙されたんだろ、と噂し合った。
結婚式に会社の連中何人かと一緒に参加したんだけど
変な結婚式だった。
親族はほとんど出席しておらず、
参加者は結構いたのだが、新郎新婦の周囲は人がまばら
新婦の知り合いは2~3人で、皆、無口。
後は、それぞれ仲の良いグループに分かれて談笑し合っている。
普通結婚式って言ったら幸せムードが溢れてるだろ。
昔からの知り合いとかもやってきてさ。
それが、どうにもこうにもよそよそしい雰囲気が漂っていた。
居心地が悪い。

あと、新婦はお人形さんのようで、
表情が良く掴めない。ニコニコしているようだが、
感情が動かないと言うか、ニコニコしながらにして無表情。
時々首を傾げるぐらいで、ほぼ無口。
可愛い顔立ちだが、ちょっと一緒にいると間が持たないって感じだった。
ブーケもやったんだが全然盛り上がらずに
わーパチパチパチって形式的な拍手と歓声で終ってしまった。
会社の奴と一緒に帰る時
今日の結婚式は一体なんだったんだろう?
ってみんなで話し合った。

それからしばらくして、彼が仕事を休んだ。
どうやら妻の家で不幸があったらしいって話だった。
周囲は大変だったね、お気の毒に、ま、気を落とさずに
みたいにねぎらいの言葉をかけた。
しかし、それから半年程して、また、会社を休んだ。
理由は同じだった。
その時も、ホント大変だね。辛い事が重なるけど気を落とさずに
奥さんに優しくしてあげなよ。
と同じくねぎらいの言葉をかけた
しかし、一年も過ぎないうちに、また、同じような理由で会社を休んだ。
でさ、そん時はさすがに何人かは変だなって思い出したんだ。
まさか休むために嘘ついてんじゃないのかって感じで。
しかし、いくら何でも良い大人が、そんな見え透いた嘘をつくか?

しばらくして、彼に子供が生まれたと話題になった、
で、おめでとう、良かったじゃないか。子供は可愛いだろ、
これでついに父親だな。とわいわいと盛り上がった。

しかし、それから半年程して、
彼は会社を休んだ。
理由は子供が亡くなったからだそうだ。
皆は言ったさ、気を落とすなよ。辛かったら無理するなよ。
大丈夫か。一緒に酒でも飲みに行くか。

それでさ、気がついたんだけど、
その時の彼は落ち込んでいるように見えるけど
なんて言うか、ケロっとしているようにも見えたんだ。
良く分からないけど、この不幸は他人事みたいな。
う~ん、とは言っても思い込みかもしれんから断言できんのだけど。

それからしばらくして、彼は退職する事になった。
理由は、どうも自分の処遇に不満があるとかなんとか
そう言う感じだったと思う。

その後、彼の荷物を総務の人間が届けに行ったそうだ。
その人から聞いたんだが
彼は夫婦でマンションに住んでるんだけど、
そこは、ほとんどゴミ屋敷だったって話なんだ。
玄関から見ただけだそうだが、とにかくゴミで一杯、
TVで見るゴミ屋敷そのものだったそうだ。
で、変な匂いがして、部屋に上がるのは遠慮したとのこと。
その時、応対に出たのは妻の方で、妻は白いレースの服を着ていたそうだ。
その服には引っ掻いたような穴があいていたらしい。

ものすごく意外だった。
なんでかっていうと彼はいつも綺麗な服を着てたし、
仕事机も清潔でゴミ一つなかった。
靴もオシャレだったし、ゴミ屋敷は彼からは想像もできなかったのさ。

これでおしまい。
スマン落ちらしい落ちがなくて。

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