鏡ばっかり見すぎたら

509 :本当にあった怖い名無し:2008/01/16(水) 05:48:10 ID:bNExUC900

洒落コワの、鏡に「おまえは誰だ」と問いかけつづけて自我崩壊する話を見て
思い出した話です。
ほんのり、というよりはあんまり怖くない話ですし、ちょっと長いので
面白くなければ飛ばしてもらって結構です。

小学一年生くらいの頃、うちのばあちゃんが良く連れて行ってくれた知り合いの
家があって
そこには寝たきりのおじいちゃんと、白髪の50代くらいのおばちゃんが住んで
いた。
家は古くて大きくて、おそらく大正時代とかに建てられたもので、造りが今の家
とは違っていた。
手押し式のポンプの井戸、青い模様の入った中国の焼き物のような和式便所、
30畳以上ある座敷、壁にかかる色あせた昔の人の写真・・・
子供だったけど古い家独特の匂いとか雰囲気にワクワクして用もないのにしょっ
ちゅう独りで遊びに行った。

ある日、私は自宅の鏡で自分の歯を眺めてた。
なんでそんなに口の中が見たかったのか良くわかんないんだけど、
そのときは面白くて結構長い時間歯とか舌とか、口の中を見ていた。
それを見ていたばあちゃんが
「そんな鏡ばっかりみてたら基地外になるよ!!」といきなり怒り出した。
(昔の話なので、不適切な言葉が出てきますがご容赦を・・・)
ばあちゃんの剣幕にびびってる私に
「あんた、鏡ばっかり見すぎたらあのおばちゃんみたいになるよ!」と真剣
な顔で言った。
「あのおばちゃんて?」
「あのおっきな古い家のおばちゃんよ。」
おばちゃんが基地外!?子供心に衝撃だった。
「あのおばちゃんは昔とっても美人やったんよ。
でもあんまり長いこと鏡で自分の顔を見過ぎて頭がおかしくなったんよ。
鏡は長い時間見るもんやない・・・・」
おばちゃんの話も衝撃だったけど、鏡が怖く感じたのを覚えている。

これで最後です
おばちゃんが基地外云々の話は今になって思い返すと思い当たる節があった。
ばあちゃんと一緒におばちゃんの家へ行った際に、おばちゃんが
年上のばあちゃんに対して「まんまんちゃ、まんまんちゃ・・・」
とかブツブツ言いながら小遣い(百円とか十円が混じった小銭)を無理やり渡そ
うとしたり、
うちのばあちゃんを土下座しそうなくらい拝んだり、そいえば寝たきりのおじい
ちゃんが
たまにおばちゃんに向かって激しく怒ってた。
あの頃は「怖いじいちゃんだな・・・」としか思わなかったけど
なにか事情があったのかもしれない。
うちのおばあちゃんとこのおばちゃんがどういう関係だったのか
今となっては良くわからないのだけど、おばちゃんの姿は今もよく覚えてる。
いつも同じボロボロに破けた青い服、ひとつに束ねた背中まである長い白髪、
どことなく焦点の合ってない目・・・大人には基地外だったかもしれないけど、
子供にはすごくやさしいおばちゃんだった。
家は取り壊されて今は学校のプールになってる。
おじいちゃんはずいぶん前に、おばちゃんは最近亡くなったらしい。

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