俺の友人

41 :『友人代表』1/3:2007/12/24(月) 05:00:41 ID:hf8Jvae90
奇妙な話をひとつ・・・怖いかどうかはさて置き。

中学生も終ろうかと言うある日の夜の事だ。
自室で漫画を読んでいた俺に階下の母親の声が響いた。
「○君(俺の家での呼び名)、友達来てるよー?」
俺は、はてと思い時計に眼を移す。午後の九時も半を過ぎようとしていた。
こんな時間に一体誰が来ていると言うのだろうか。
胡乱に思いながらも部屋を出る。階段を下りて玄関へ――
だがそこには誰もいなかった。玄関のドアは開いているのだが誰も居ない。
「おかーん! 誰も居ないぞー!?」
台所に呼びかけると、母親がひょっこりと顔出して、
「あれ? 今までいたのにねぇ」
との事。もうワケが分からずにとりあえず、外に出てみようと思い靴を履こうとすると・・・

「何だこれ・・・煙草?」
何故か俺の靴の中に未開封の煙草が押し込まれていた。銘柄は『HOPE』だった。
でも何故それが靴の中に押し込まれているのかまったく分からない。
とりあえず煙草をポケットに押し込むと、靴を履いて外に出る。誰も居ない。
家の周りを見て回ったが『俺の友人』と思しきヤツはは愚か、人っ子ひとりいない。
仕方無いので家に入ろうと、玄関先に留めてある俺の自転車に、何だか見慣れない紙袋が押し込めてあるのが目に付いた。
その日は自転車など使っていなかったのでカゴに何か忘れ物をしたとも考えられない。
そうすると、これは『俺の友人』が残していったものなんだろうか?
と言うか、そもそも『友人』て誰の事だ? 疑問に思いながら俺は紙袋を手にとった。
割と重みがある。中に入っているであろう物のラインを指でなぞってみると
何やら硬い。大きさはBの5判程度・・・厚みとしは2、3センチと言った所だ。
恐らくは本だろう・・・しかし、本? 誰かに漫画を貸していた覚えは無い。
俺は恐る恐る紙袋の中を確認し――

「うげ!?」
思わず声を上げる。そこに入っていたのは確かに漫画だった。
しかしその漫画に覚えは無い。当り前だ。
何故ならそれは表紙に筋肉質な男が絡み合っている――つまり、ボーイズラブどころか薔薇薔薇したようなお方が愛読して止まないような本だったからだ。
当り前の話だが俺にそんな趣味は欠片もない。あってたまるか。
俺は嫌悪感と吐き気と、何故こんなものがここにあるのかと言う理不尽な怒りからすぐさま家の傍に流れる水量豊富なドブ川に走って行くと、全身全霊の力を込めて紙袋を投げ捨てた。
不穏な紙袋はそのまま川の流れに乗って、直ぐに見えなくなった。
俺は怖いんだか、不気味なんだか腹立たしいんだか・・・
傍にあった一斗缶(家のゴミを燃やすのに使っていたものだ)を蹴り上げると家に戻ることにした。

・・・と、ここまで読んだ人は「おいおい、そりゃただの悪質な悪戯だろ」と思うだろうがこの話にはちょっとしたオチがある。
家に戻った俺は母親に詰問するような声で訊ねた。
「おかん! 誰や、今来た言う俺の友達って!?」
「誰って・・・あんたの友達やんか。○○君(俺の名前)居ますかって言うから」
「だから誰や! ××(知り合いの一人)か!?」
すると母は首を横に振り、
「違うなあ」
「なら△△か! それとも◎◎か!?」
母は暫く考えた後・・・
「いや、それも違う・・・でも、何回かウチに来てた子だったと思うよ・・・それも、最近」
ウチに来てた? それならある程度察しがつく。
俺は部屋に戻ると学校の集合写真やら何やらを引っ張り出して来て母親に突きつけた。
「これか?」
「・・・違う」
「なら、こいつか?」
「いや、違う」
写真の中から何度も、そしてここ最近ウチに来ていた友人をピックアップして面通しをしてゆく。
だけどその答えはすべて『NO』だった・・・
他に候補として近所の連中も数人くらいいたが、そことは家ぐるみの付き合いをしているのでそもそも母親が名前を知らないわけがない。
「じゃあ、誰やねん! 俺の知り合いかホントに!?」
怒鳴り散らす俺に普段は温和そのものな母親もちょっとキレ気味で、
「でも、前に見たことあるんやって! 何回も!」
と、頑として譲らない。
結局、その『友人』はそれきり我が家を訪れることは無かったが、

果たして俺の知らない『俺の友人』って、一体誰だったんだろうか、今でも謎。

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