先客の女性
868 :本当にあった怖い名無し:2007/12/16(日) 07:55:57 ID:M74uLa/A0
前に住んでいたマンションで、嫁と体験したこと。
12月、ディズニーランドのクリスマスイベントに行こうということになり、
冬だとまだ夜が明けない、六時くらいに家を出た。道は込むだろうし、
朝食はゆっくり店に入って食べたいからだ。
八階からエレベーターを呼ぶと、先客の女性がいた。セーラー服を
着ていることから、学生であると分かる。
「日曜も朝練があるのかな、大変だな」
と思いながら俺達はエレベーターの奥に陣取ったのだが、廊下では
クリスマスソングを小声で歌っていた嫁が、妙に静かだった。
一階に着くと女子学生は降りようとしない。核家族が多くて、互いに気を
使うようなマンションだから「開く」ボタンを押してくれる人とかがけっこう居て、
思春期の子とかが恥ずかしがって無言で待ったりするのもよくあることだから、
俺は嫁の後を追うようにして、軽く会釈をして降りた。
廊下を嫁がすごい勢いで走っていく。顔は青ざめていて涙ぐんでいた。
聞くと、エレベーターが来た時点でもう死ぬほど怖かったらしい。
「なんで人が乗ってるのよ!変でしょ!」
と怒鳴られて初めて、十階建ての六階で待機してるエレベーターを下りで
呼び出して、先客がいるわけがないことに気づいた。
「指がなかったの」
身長による視角の違いで俺は気づかなかったのだが、女子学生の手は、
手首の少し先から、のっぺりと、しゃもじみたいに丸く無くなっていたという。
嫁は妙なものと密室に閉じ込められた恐怖で、空気にすら悪いものが混じって
いるんじゃないかと、ずっと息を止めて、目を瞑ったまま耐えていたらしい。
そういえば鞄も持っていなかったし、中学時代から住んでいる町だが、
セーラー服の学校なんて知らない。
「なんで気づいてくれないのよ。少し考えれば変だって分かることでしょ」
そんな理不尽な怒りをぶつけられ
「ねぼけてたし、思春期の女の子がオッサンにジロジロ見られたら嫌だろ。
男はそういうの気を使うんだよ」
と苦しい反論をしたが、その日は結局、ディズニー行く気分になれず、
かといって家に帰るのも怖いので、一日中カラオケで時間をつぶした。