川で死んだ女の子

699 :1/6:2007/12/08(土) 19:00:40 ID:rNlF2IJj0
友人と話してて思いだした話。
正直、懐かしい思い出ってだけで、そんなに怖い話ではない。
長文で申し訳ないが、暇な人は付き合ってくれ。
俺より一つ上の友人と、酒を飲んでいた時の話だ。
その友人が、三十年程前に買った女の話をしてたんだが
五つ程度年上らしいその女には、戸籍が無いという話だった。
これから話す事に関係ないので、女の話したことは要点だけに留める。
曰く、「子どもの頃、父親(だと思うが確信はない)に犯されて、売春の斡旋所に連れてこられた」
という事らしい。母親の記憶は無いそうだ。
真偽についてはどうか知らんが、多分同情を誘って金を貰おうとかいう腹だったんだろう。
友人はその話を信じているらしいので、水は差さず適当に相槌を打って聞いていた。
気になったというか、今回の話を思い出すきっかけになったのは、
その女が○△村に住んでいたという話をしたと聞いた時。
(私の個人情報が漏れるのが恐ろしいので、申し訳ありませんが名前は伏せます)
俺の昔住んでいた村の名前に少し似ており、それがきっかけで村の名前を思い出せたのだ。
ずっと昔住んでいた村の名前が思い出せなかったもので、心が晴れて気分が良かった。
それから、少しばかり話をした後、友人と別れて帰宅。
その後、村の事をつらつらと思い出していると、変な出来事を思いだした。

今から四十余年前、俺の歳がまだ一桁の頃に住んでた場所なんだが、
何と言うか、一番記憶に残っている華やかな出来事が、コンビニができた事だ。
二十四時間営業。夜中でも電気がついて、物を売っている。衝撃だった。
是非夜中に直接見たいと親に頼んだ所、彼らも興味があったのか、すぐに承諾してくれた。
感動したわけではないが、実際、見てみると軽くハイになった記憶がある。
冬に備えて、薪を拾っていた事もあった。
弟と二人で拾いに行き、いびつな薪を弟に、まっすぐな薪を自分が背負う。
重労働ではあったが、必要な仕事であった。
今、周りの同僚や友人に聞いてみても、私のような経験を持っているものはいない。
私の住んでいた村は、それなりに発展が遅れていたのだろう。
とはいえ学校もあったし、上下水道も当然あった。
日本昔話に出てくるような、『昔々の日本の村』では決してないので、勘違いしないでいただきたい。
藁を編んだりはしていたけれど。

夏のある日の事、村で女の子が一人行方不明になった。
近くの山で道に迷ったか、誤って川に落ちたか。
頻繁にある話ではなかった。
だが両親の話では、子どもが行方不明になる事は、たまにあったらしい。
同い年で俺も良く知っている子だったので、心配でならなかったが、子どもは捜索に加われなかった。
村の大人たちが総出で捜索し、村長(村長の息子だったかもしれない)が、
その子どもの靴だか帽子だかを川辺で見つけたらしい。
その川は皆、大人たちに近づかないよう言われていた。流れが速く、深かったそうだ。
それから川の捜索を重点的に行ったが、しばらくして下流の方で女の子が着ていた上着が見つかり、
そのすぐ後に捜索は打ち切られた。
しばらくの間、俺たちは川にかなり注意していて、近づこうとする奴はいなかった。
俺は特に臆病で、それ以来川へは近づかなかった。

古い記憶なので、正確な日時は覚えていない。
だが、その事故からそんなに経ってはいなかった様に思う。
多分、三十日位経った頃。
四人の友人たちと森で遊んでいた時の事だ。
あんな事故のあったばかりなので、普段より道から外れない場所で遊んでいた。
森でも迷子になれば、あの女の子の様に帰れなくなるかもしれない。
大人たちからも、充分気をつける様きつく言われていた。
ただ、代わりに普段よりも遠くまで来ていた。
見慣れない景色は何となく楽しいが、同時に、遊んでいても、何となく森の奥が怖い。
まだ日は高く、これから何をして遊ぼうかと友人たちと考えていた時、
俺はその時、蝉を取りたかったのだが、友人の反対多数により却下されていた。
内心ふて腐れながら蝉の声に耳を傾けていたのだが、そんな時、変な音がする事にきがついた。
どん どん どん と、森の奥から、何かを叩く様な音が微かに聞えてくる。
友人たちに聞いてみると、何か聞えるな、何だろうな、と全員が多少の興味を抱いた。
そうなると、当然行ってみようという事になる。
これが夕方ならば引き返したかもしれないが、まだ日は高い。
見知らぬ場所ではあったが、簡単に迷うことは無い。
臆病な俺は方向を無意味な程気にしながら進んだが、そんな必要は無かったように思う。
しばらく進むと、木で出来た、倉庫の様な、小屋の様な、小さくボロい建物が見えてきた。
そこから音は聞えてきているようで、俺たちは少し怖がりながら近づいていった。
声をかける様な事はせず、小屋の周りをそっと見渡し、最終的に入り口の前に皆が集まった。
その小屋は、外から鍵がかけられていた。普通、飼育小屋以外では、内側につける型の鍵だ。
俺たちは何か動物でも飼育しているのかと思った。
錆びた鍵を友人の一人が外すと、扉は簡単に開き、俺と友人たちは小屋の中に入った。

隙間だらけの室内は、窓が無くても多少は明るい、というか、薄暗い。
入り口は子ども二人が無理矢理同時に入れる大きさで、
俺と他三人の友人が無理矢理はいっていったのだが
俺たちが入ろうとした時、前の二人が立ち止まった。
そこにいたのは、川で死んだ女の子であった。膝立ちで壁を叩いていた。
最後尾にいた友人は、早く中へ入れろと言っていたが、俺たちはそれどころではない。
前の友人が、その場で女の子に、お前は何をやってるのだと聴いた。
すると女の子は、立ち上がってこちらにむかって歩いてきた。
薄暗い室内では、その格好は良く見えなかったが
ボロボロの衣服と若干血(だと当時は思った)の付いた姿は、この世の者ではないように感じた。
内心気味が悪かったが、前の奴らが中にはいっていったので、俺たちも付いていこうとした。
しかし、最後尾にいた奴が入ってこない。
どうしたのだろうと後ろをむくと、そいつが慌てたように小屋にいる俺たちにむかって、
誰か来たから逃げようぜと、小声で叫んだ。
何か、そう遠くない所で、がさがさと誰かが近づいてくる音がする。
森の奥で遊んでいる事がバレたら、相当きつく怒られる。
めいめい、逃げる時は勝手に逃げるのが俺たちのやり方で、四方八方別の方向にかけて行った。
とは言っても、なれない道のため、普段の場所よりは比較的固まっていた様に思う。

俺は、霊感が強い人間ではない。幽霊を見たのは、後にも先にもそれっきりだ。
直後、両親にもその話をしたが、あまり相手にして貰えなかったように思う。
次の日に、友人たちとまたあの場所へ行こうと約束はしたものの、次の日はあいにくの雨。
確信はないが、多分それ以降行ってはいないと思う。
それから半年~一年くらい後に、ここよりも多少ましな場所へ引っ越そうという事になり、
それきり、その村には行っていない。
というか、両親から聞き出しておらず、また、もう聞き出すことができない為、
今ではそもそも、場所が分からなくなっていたのだが。
しかし、友人との会話で村の名前を思い出せたので、近々探して行って見ようと考えている。
今思うと、小屋の外に誰かが来たから逃げ出せたものの、
あのままそこにいたらどうなったのだろうと思う。
だが、考えてみれば、あの場所は人通りも少なく、そう頻繁に人が来る場所ではない。
ご先祖とか、守護霊とか、そういった類の者が、危険を知らせる為に出てきてくれたのではなかろうか。

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