ばあちゃん

271 :本当にあった怖い名無し:2007/11/22(木) 03:09:24 ID:qZvR96u0O
『ばあちゃん』
迷ったんだけど、こちらに投下する。
俺は、訳あって、お父さん側のお母さん(早い話、ばあちゃんね)に
育てられた。まぁ、じじばばに育てられたんだ。
そんな婆ちゃんが、一昨年死んだ。
死ぬちょっと前、婆ちゃんと喧嘩したんだよね。
理由は婚約中の彼女の事。
ちゃんとやっていけるのか、とかそんな事だった。
最後まで彼女の事気にかけてた。

そんな時、突然婆ちゃんが死んだんだ。
人の死ってあっけないんだな、ってのが正直な感想だった。
婆ちゃんが死んで一年。何となく婆ちゃんに電話したんだ。
いや、掛かるはずないの。だって、既に婆ちゃんちは
廃墟だったからね。でもかけてみたんだよ。
何でかは分からない。無性に婆ちゃんの声が
聞きたかったんだ。

『おかけになった電話番号は現在、使われて~』

当たり前だよな。でも、チャレンジは続いたんだ。

人生の壁にぶち当たった時。
彼女との披露宴。俺は婆ちゃんに電話し続けた。
もちろん出るどころか、『こちらは~』になる。

でももしかしたら婆ちゃん出てくれるんじゃない?
って淡い期待を抱きつつ、三年経ったの。

嫁さんと、派手な喧嘩してさ、絶体絶命の時。
婆ちゃんに電話したんだ。
いつもだったら『おかけになった~』ってアナウンスの所が、
『プルルル』

!呼び出し音が鳴ったのよ。
でもよく考えりゃ、あれからかなりの年月が経ってる訳だしさ、
他の住人が入ったのかな、って思ったわけ。
とりあえず、頭ではそう思ったんだけど、呼び出し音鳴って
正直嬉しかった。誰か出たら、謝って切ろうと思ったんだ。

『もしもし』

!
そう言った声は、紛れも無く婆ちゃんだった。

俺が『え…婆ちゃ…?』って言い終えないうちに、

『このばがもんが!身重の嫁さん大事にしねで
何やってる!
ババさ電話かげでる暇あったら、嫁さん気にかげろ!』

いきなり怒られた。その日は、奥さんと喧嘩して、
むしゃくしゃしてたんだ。だから突然そう言われてびっくりした。

『きいでんのが!』婆ちゃんはそう言う。

でも、『婆ちゃん、死んだよな?』

『…』
沈黙が続く。やっぱり偶然の悪戯か。
謝って切ろうとした瞬間だった。

『○○(俺)、不憫な思いさせちまってすまなかったねぇ
お前の電話、いつも出たかったんだよ。
でも決まりでね、そうもいかなくて。
ああ、(何かに気付いたかのように)○○ちゃん
の赤ちゃんはおなごだからねぇ。
そろそろ行かなきゃ。風邪に気ぃつけんだよ。
もうこれきりだからね。』

婆ちゃんはそう早口に言うと、電話が切れた。

『プー…プー…』
俺は、もう一度かけ直した。

『お客様の、おかけになった~』
リダイヤルから電話したのに。

俺は、婆ちゃんが死んでから、初めて泣いた。
みっともないけど、泣き叫んだよ。
俺の不思議体験は終わりです。
きっと婆ちゃん、見兼ねて、電話に出てくれたんだろうなー

今、奥さんと子供と毎日何とかやってる。
これが『幸せ』って言うんだろうな。


ちなみに、娘が生まれた。婆ちゃんすげい。

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