抜け道

561 :536:2007/10/14(日) 09:45:01 ID:XCQ2UXo00
>>553
他人事っぽいけど、いっしょに仕事をする俺ら学生にとっても
そういう人達やだったよ。


K市のバイパス外側は広大な田園地帯で、田んぼと空き地が多く家はまばら、
ぶっちゃけ寂しい。
家が少ないんだから読者も少ないわけで、その分担当区域の面積が広がる。
カブに乗って、AM3:00~6:00くらいの間に70km以上走りつつ配達しなけりゃならない。
広い分、不気味なところも多くかなり変な体験もした。しかしいずれも俺一人の
体験だから信憑性に欠ける。怖くも長くもないが、目撃者がいる話を。

前述のようにシビアな区域なので、新規や試読の家でもあれば、事前にゼンリンの地図などで
念入りに調べておく。これ大事。現地は大概まっくらだから、頭に地図叩き込む。

その時の新規さんのお宅のまん前に、地図上では寺と林だかなんだかの土地に挟まれた
抜け道のようなものが曖昧に表記されていた。ちょっと怪しいが、これ使わないとひどい
遠回りになるので、とりあえずそこにアタックしてみることにした。

飛ばしまくって、やっとこさ件のところに。
今いる道と平行に走る道が、寺の向こう側にあって、そんでどうも目当ての家らしき黄色い
明かりが、擁壁っぽいのに挟まれた隙間の向こうに見えた。これが抜け道か。
明かりは他に無くて、道もどうやら舗装されてないみたいで不安ではあるが、
何しろ急いでいるのです。突っ込んだ。
木の枝でも垂れているのか視野が暗くなりはしたがすぐに出た。小奇麗な一軒家に
朝刊を入れ、またカブにまたがろうとすると、ちょっと離れた家の前で、
他の新聞屋が二人(たぶん引継ぎのために順路教えてたんだろ)、面食らった感じで
こっちを見て立ってた。
横を通り過ぎようとするときも露骨にこっちを目で追うので、
「なんかありました?」と尋ねたら、おっさんの方が
「・・・あんたどっから来た・・・」は?

「市内の○○新聞の店ですけど、何か」
「違えだろっ ほら」
「出身なら東京ですけど」せっかちな俺が答えてると、おっさん指差してる。
その先にあるのは、5、6段積みあがっただけのコンクリートブロックの壁。
おっさん怒ったように「ほらぁ!!」と言い、指差しながら壁に向かってゆく。
どこまで行くんだと見てたら、さっき入れたお宅の前まで歩いていった。
そこで気づいた。さっき通った俺の道が無い。
「は!? あれ? これ!?」
仕事モードのときの俺は、驚きこそすれ恐怖・ショックは薄いので、躊躇せず
壁の向こう側を覗く、貧相な墓だか碑だかがランダムに立ってた。
おっさん「おいやめとけっ、なんか化かされてるんと違うか、さっさと行こうやもう」

お互いどういう状況だったのかを教えあうまもなく二人は去って、俺も仕事モード
だったので特に違和感無く配達続行。飛ばしてる間の事故のほうが現実的に
怖かったので、すぐにさっきの恐怖感は無くなった。

昼間来てみると、墓のほうへの道が半分くらいあるだけで開通してはおらず、
古墳みたいなこんもりした盛り土や、擁壁なんかも無かった。
寺は廃寺って感じで、絶対近づきたくない雰囲気。念のため失礼の無いように
碑などを確認したが、大してヒントになるようなものは無し。
そのお宅は1ヶ月で止まったので助かった。

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