取引先のNさんから聞いた話

863 :1/4 取引先のNさんから聞いた話。:2007/09/17(月) 21:52:12 ID:P5FCkvkg0
Nさんはどこにでもいそうな、中肉中背の特に目だったところのないリーマン。
自称霊感ありの、30代毒男さん。
そんなNさんは会社の後輩の、K君とT君とよくつるんでいるそうです。

T君は一番年下ながら、無口で常に冷静沈着、しっかりし(過ぎ)ていることと
年の割りに微妙にメタボっているお腹から、職場でのあだ名は「若年寄」。
そして彼だけ既婚者。
K君は、普段は宴会部長キャラで合コン大好きで、学生時代スポーツやってたためか
ガッシリした体格の、ちょっと頭は悪いけど憎めないヤツって感じの人。
そんなK君だけど、持病があって、ふとした拍子に「発作」が起きるらしい。
本人曰く「精神的なものからくるタイプのものです」とのこと。

その発作の症状は主に幻覚を見たり、幻聴が聞こえたりするのだそうな。
Nさんも今まで何度か発作の現場に居合わせたことがあったらしく
K君が耳をふさいでしゃがみこんでガクガク歯を鳴らして震えたり、
Nさんを抱きしめて「怖いのでしばらくこのままでいてください…」と
普段のK君からは想像もつかないような、か細い声で呟くのだとか。

Nさんは特に小柄ではないものの、がっしりタイプのK君に
顔をK君の肩や胸に押し当てるようにして抱きしめられると
中にすっぽり入ってしまうし、恋人にするようなハグっぷりなので
(こいつウホッじゃないだろうな?)と、たまに不安になるそうですが
その体勢だとK君の体の細かな震えを直に感じるので、本当に
病気だった場合を考えると、振り払ったり出来ないのだそうです。

先日、三人で出張に行くことがあったのですが、そのときに起きた話です。

営業先への挨拶周りも終えて、ここは一つきれいなおねーちゃんのいるお店で
疲れを癒しますか…とキャバへw
そこでまあそれなりに楽しんでwホテルに帰ろうということになり
三人で乗り込んだタクシーの中で、またK君が「発作」を起こしたそうです。
体格の関係上、助手席にT君・後部座席にK君Nさんと座っていたのですが、
K君がいきなりNさんを引き寄せ、覆いかぶさってきたというのです。
流石に、タクの運ちゃんという第三者がいるので
「ちょ…やめっqwせdcfrvtgbyhぬじk!」と思ったそうですが
K君は何度もスイマセンスイマセンと言いながら震える体でNさんをがっちりホールド。

そのとき、それまで静かだったT君がいぶかしむ運ちゃんに
「すみません、パニック障害の発作が出ただけですので、気にしないでください。
 あ、大丈夫ですよ。すぐ治まりますので。車は止めなくていいです。
 どちらかというと、急いでください。部屋で休ませた方が落ち着くと思うので」
と、平然と言ってのけてその場を取り繕ったとか。

そういえば、三人で居る時に「発作」が起きても、いつも抱きしめたり
手を握られたりするのはNさんだけで、そういうときT君は大抵ぼーっと
周りを見回したり、どこか遠くを眺めていたりする…無関係とでも言わんばかりに。
あまりにも見事なフォローに、Nさんは内心、Kはやっぱりウホッの人で
後輩のTがKに協力しているんじゃなかろうか?このまま宿に着いたら
俺の貞操マジでやばいんじゃないだろうか?と思ったそうです。

数分後、車はホテルに到着。
そのころにはK君の発作も治まり、降り際に運ちゃんに「驚かせてすみません云々」と
普通に挨拶が出来るようになっていたとか。
部屋割りはNさんがエレベーターに一番近い部屋だったため、最初に2人と分かれて
部屋に入ったのだそうですが、隣のK君が自室のドアを開ける音がしたと同時に
T君が「Kさん、ちょっと」と呼び止める声が聞こえたそうです。

その前のタクシーの中での連係プレーが少し引っかかっていたNさんは
ドアに耳をつけて2人の会話を盗み聞いたんだそうです。
以下、そのときの会話(Nさんの脳内補完が多少入ってると思われる)。

T「さっきは何が『居た』んですか?」
K「そんなこと聞いてどうすんのよ?」
T「Nさん、霊感とかこれっぽっちもないですよ。いつだって、全然気付かないじゃないですか。
 それに、NさんはKさんのことゲイじゃないかって疑ってます、多分」
K「いいじゃん。生きた人間を疑って振り回されながら生きていく方がよっぽどマシ。
 見えないなら、聞こえないならその方がいい。それでいい」
T「なんでいつもそうやって守るんですか?どうせ見えないですよ」
K「もし、あの人が本当に見えたら、きっとチャンネル繋がりっぱなしになる。切れなくなる。
 そんな状態、俺なら耐えられない。そんな思いをNさんにさせたくないし…って、あれ?
 なんでこんなにあの人に入れ込んでんだろうね?俺、やっぱりそっちの気あるのかな?アハハハ」
T「…わかりました。おやすみなさい」

K君を苦しめる「発作」の原因。幻覚の正体。
K君はそれらの存在を否定し、自分に精神的なものが原因と割り切ることにした。
もし、K君が見ている世界を自分も除いてしまったとき
自分は割り切ることが出来るだろうか?

Nさん、次にK君の「発作」に居合わせたらどうしよう、って言ってます。
聞くんじゃなかったと。知るんじゃなかったと。

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