長い間かけて体験した出来事

430 :本当にあった怖い名無し:2007/08/24(金) 15:01:20 ID:rGL9g4oI0
長文ですが、行きます。

子供の頃から不思議な体験が何度かあった。

うちの家は、父がまだ子供の頃に無人だった民家を買い取った古い家で、築130年くらい。
どうしてそうなったかは分からないけど、仏壇が残ってあってうちの先祖とその仏壇に残ってあった位牌は一緒に祭られてた。

囲炉裏や釜戸が屋内にあるような家で、壁も天井も煤が染みこんでて真っ黒だったんだけど
古い位牌は全部真っ黒、戒名とか何が書いてあるかとか、そんなのは何も分からなかった。
そんなわけだから、どの位牌がどうとか全然分からないはずなのにどうしてか気になる位牌があって
その位牌は何故か大人の女の人だな~と思っていた。

目の前にいるわけじゃないのに、その位牌を見てると女の人が頭の中に浮かんでくる。
濃い暗い感じの色の、柄も何もない着物を着た女の人。
髪の毛は丸みをつけて纏めてる感じだった。
子供だったからどう表現していいか分からなかったけど、大人になってからあれは日本髪だったんだなと気がついた。

その女の人の事は実際に見えてたわけじゃない。
20年くらい後まで何も分からなかったけど、もう一人、女の子がいた。この子は実際に見える事があった。
(他にも見えていた事があったけど今回には関係ないので割愛します)

ふとした時に、綺麗に前髪を切り揃えた女の子がいる。
人形なんだか子供なんだかよく分からない女の子。
どう言えばいいかな。
人形の中に子供が入ったらこんな感じなのかなって感じの小さな女の子がいたんだ。
人間と人形の中間、といった雰囲気で。
背が60cmくらいで、赤ちゃんの大きさだけど立ってる。
大きさは赤ちゃんくらいだけど、顔や体のバランスは赤ちゃんじゃない。

着物の女の人は頭の中に浮かんでくるだけだったけど、この女の子は見えてた。
夢はただの夢かもしれないけど、夢に何度か出てきたこともあった。
この子はいたずらをする事があった。

小学生のころ、親同士が友達の幼馴染姉妹が家に泊まりに来る事があったんだけど
その幼馴染二人と自分と妹と、夜遅くまで喋ったり四人で遊んでた事があった。

障子だけど、床より少し上くらいのところにガラス板がはめ込んである障子、それのある部屋で四人で喋ってたら
障子に背中を向けて話してる幼馴染の後ろのガラスの向こうに誰かが来た。
女の子だった。
暗い隣の部屋から、すりガラス越しにこちらを覗いていた。

音も何もなかったけど『あ・・・』って思ったら消えた。
消えたと同時に幼馴染の姉の方がその障子の方に振り向いた。
そんなふうに驚かすように現れて覗いて消えて、位置的に見えてなかった幼馴染が振り向いたことにも驚いて
怖くなってなぜか口にしてはいけない気がして聞けなかった。
でも、彼女も何かに気がついたんだと思った。

それから何年か後、自分は中学生になっていた。
ある日、台所から中庭に向かって小さな手を出しているのを見た。
台所の窓から小さな手が肘くらいまで静かに出てきてそしてまた静かに消えた。
消えたというよりは手を引っ込めて家の中に入った。

もう自分も中学生だったしその時は確認した。すぐに家の中に入ったけど台所には誰もいない。
別の部屋にいた母を見つけて母の手ではないと分かっていたけど
「今台所にいた?」と聞いた。いなかった。
「どうして?」と聞かれたから
子供の手みたいに見えたけど、台所から手が出てるのが見えた、自分には、いつも見えてるわけじゃないけど
子供の頃から小さな女の子が時々見える事があると話した。
母は黙った。

高校を卒業と同時に家を出て、滅多に自宅に帰ることもなくなっていたころ持病があった母が入院した。
20歳を超えてて、その頃には私には女の子は見えなくなっていた。
今思うと薄情に思うんだけど、子供のころから見えてたはずなのにその女の子の事を忘れてしまっていた。

父しかいない家の掃除やら片付けやらで帰った時、普段は触らない父の荷物の中から綺麗な景色の写真が出てきた。
その写真と一緒に『亡くなった娘に対する父親の思い』を書いたメモがあった。
「子供がもう一人いたの?」驚いて父に聞いたら、それはただ綺麗な景色が撮れたから詩をつけただけだよと言われた。
父の写真とメモは印象に残ったけど、姉か妹がもう一人いたなんて考えた事もなかったから父の言葉をそのまま信じてその時の話はそのまま終わってしまった。
その後退院した母にもその話はしなかったと思う。

それからさらに数年。
実家から他県に移り、30歳を過ぎて自分にも子供が生まれた。
昔の記憶として子供の頃に見えていた女の子と位牌の女性のことを思い出すこともあったけど、忘れていた。
妹から電話があった。

妹が住む実家のある高知では「たゆうさん」(漢字は分からない)と呼ばれている霊能者がいて
友達の付き添いで行った事のある妹も「一度みてもらいたいな」と思っていたらしく
その機会があったと報告してきた。
不思議な夢を見た、
仏壇の前で木の枝が体に絡み「行くんならみんな一緒に行くよ」と言ったところで目が覚めた日
その霊能者のところへ行った。

すぐに出てきたのは赤ん坊だった。
少し古い時代の女性も一緒だったそうだ。

赤ちゃんは、私達の知らないもう一人の私達のきょうだいだった。
(女性は呼吸器の病気で亡くなった人、赤ちゃんはあなたのお母さんの子供さん、生まれる前に亡くなっている、という言われ方をしたそうだ)

ずっと何年も忘れていた、あの位牌の女性と、人形のようだった女の子を思い出した。
父の写真とメモを思い出した。
誰にも分かってもらえなくても、見えなくても、あの人とあの女の子はずっといたんだな、と思った。

きょうだいなのに知らなくて、何度も見えていたのに忘れてしまってごめんなさい。
あの女の人はもしかしたら私達と一緒に育っていたはずのその子と一緒にいてくれたんだろうか。

自分に子供が生まれて、子供を育てる大変さと我が子の可愛さが分かるようになって
我が子を失ってしまう親の気持ちも想像ができるようになって
その赤ちゃんのことを、両親に確認することはできない。
母親は特に、自分が死ぬまで忘れられない辛いことだろうと思った。
ずっと私達に隠してきたんだから、両親に確認するのはやめよう、妹と話した。

私が最後にあの女の子を見てから、20年近くになる。
「上に上げる」という時刻に遠くから私も一緒に祈ったけれど、私にはもう何も分からなかった。
どうか安らかにあって欲しい。

私が長い間かけて体験した出来事、でした。

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