864 :柳:2007/08/04(土) 22:36:47 ID:firHBuvfO
俺はしがないリーマン、霊感は無い。
バス通勤しているんだが、家がバス路線のちょうどの真ん中にあるらしくどちらにも微妙に遠い。
(選択肢は増えるけど)
ある晩、いつものようにバスを降り、夜道を一人帰っていた。
地方の新興住宅街らしく、少し外れると真っ暗だ。
腹減ったなーなんて思いながら川?のある場所にさしかかった。
その川は、小さな川で道路拡張の為にほとんど道路の下にあるんだが、そこだけ水面をさらしていた。
いつも柳が覆い茂るそこを右手に見つつ通った。月に照らされて川がキラキラと光っていた。
いつもは何も思わないけど、『キレイだな』と思い、柵越しに川を眺めた。
しばらく川を眺めていると、急にゾクッとして鳥肌がたった。しかも体の左側のみ。
おそるおそるそちらを見る。

誰もいない。

ホッとして空を見上げようとした。

いけなかった。

覆い茂る柳の先端(一番競り出している部分)に顔を見付けてしまった。
その顔は真っ白で、正面を真っ直ぐ見つめていた。

どう考えても、人間がそこから顔を出すことは不可能だ。
第一、体どころか髪や首が全く見えないではないか。
ヤバイと思った俺は、ひきかえそうと踵を返した。
しかし、不思議なことに数歩歩いた所で振り返ってしまった。
いや、雰囲気・存在感に圧されて振り返らざるを得なかったのが真実だろう。
ソレはこっちを見ていた。
顔は正面を見据えたまま、目だけで…
乱視気味の俺は、夜はモノが見辛い。しかしその真っ黒いビー玉の様な目はハッキリと見えていた。
目を反らしたいが出来ない、その時携帯が鳴った。
ハッと我に返る。気が付くと、もう顔は無かった。
しかし、もう柳の前を通る気にはなれず遠回りをして家に帰った。
それ以来、その路線のバスには乗っていない。
最後に携帯をかけてきたのは妻からだった。

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